Intel 6シリーズ・チップセットのリコール問題も、先日の"B3"版チップ搭載マザーの発売再開をもって正常化した。当初供給不足気味だったCPU、とくにKシリーズCPUについても供給が追いつくようになり、Sandy Bridgeへの移行に関する心配の種はほぼ無くなったと言えるだろう。この機会に、今回は評価機ではなく、実際に店頭で販売されている製品を使って、Sandy Bridge世代のオーバークロック作法を確認しておこうと思う。
CPUとチップセットの組み合わせでOC可否が決まってしまう
まず、Sandy BridgeとIntel 6シリーズから変わったオーバークロック作法について説明しよう。CPUラインナップのなかに、Core i7-2600Kやi5-2500Kのように型番末尾に「K」の付く製品がある。これはLGA1156の頃のCore i7-875Kと同様、Turbo Boost時のCPU動作倍率のロックが解除された製品であることを示している。ちなみに、お馴染みの秋葉原の自作イベントなどで同社担当者が話していた内容を参考にすると、このTurbo Boost時のCPU動作倍率のロック解除機能の有効・無効は、ある特定の信号によって判定しており、「K」の付くCPUと「Intel P67 Express」との組み合わせでなければ解除されないと説明されている。
ということは、つまり「K」の付くプロセッサを「Intel H67 Express」と組み合わせてもロック解除はできない。いちおう、「K」が付くプロセッサの統合GPUはIntel HD 3000だから、他の無印プロセッサのIntel HD 2000より高性能であり、まってく無意味とは言えないが、H67との組み合わせは、どちらかと言えばイレギュラーな組み合わせだと言えよう。
ただ、H67は、本当に何も遊べないチップセットなのか? というとそうでもないようだ。H67との組み合わせでは、GPUのオーバークロックは許可されている。CPUと同様に、現在のPCではGPUのパフォーマンスも体感速度に大きく関わってくるため、その点で期待できる。ただ、そのGPUがCPUに統合されているため、熱設計や冷却もCPUパッケージやCPUクーラーに依存する。どこまで引き上げられるのか、というのは実際のところなかなか難しい。いざSandy Bridgeでオーバークロック、と意気込んでも果たしてその快感を得ることができるだろうか。そうしたユーザーならやはりP67を選び、CPUをOCするのが無難であると思われる。
ところで、一番基本的な組み合わせでの例で、「K」ではない無印のSandy BridgeプロセッサをP67と組み合わせた場合はどうなるのだろうか。実はこれ、「定格+4段(400MHz)までのTurbo Boost倍率の上限引き上げは可能」というのが答えとされている。無印であっても、まったく何もできないというわけでもないようだ。
■P67のOC概要 | ||
「K」シリーズ | その他のSandy Bridge | |
---|---|---|
CPUの倍率変更 | ○ | 上限+4bin(+400MHz)まで |
統合GPU | × | × |
GPUのOC | × | × |
QuickSyncVideo | × | × |
■H67のOC概要 | ||
「K」シリーズ | その他のSandy Bridge | |
---|---|---|
CPUの倍率変更 | × | × |
統合GPU | Intel HD 3000 | Intel HD 2000 |
GPUのOC | ○ | ○ |
QuickSyncVideo(※) | ○ | ○ |
※ただしプライマリディスプレイアダプタであること |
さて、以上を踏まえ、しかしながら、動作倍率を上げていっても確かにオーバークロックなのだが、やはり従来のベースクロック(BCLK)の引き上げによって極限クロックを探るのがオーバークロックの醍醐味ではないかと思う。ところが、Sandy Bridge世代ではこれがあまり意味を持たない。いちおうマザーボードによってはBIOS設定からはBCLKが設定できるが、実際に試してみるとわずかに引き上げるだけでも動作が不安定になる。
これには理由がある。従来であれば、チップセット外のPLLによって様々なクロックが生成され、各部に供給されていた。しかしIntel 6シリーズには新機能としてチップセット内部にオシレーター(クロック生成器)が埋めこまれ、これが全てのクロックを供給している。同時に、他の回路についてもこのクロックで動作するよう設計されているため、わずかに引き上げただけでも影響を受けてしまう。CPU倍率の変更を軸にしたオーバークロックをせざるを得ないのが現状だ。