有事の際の工業利用も視野に
――なるほど、投資家にとって、いろいろなメリットがあるんですね。ところで、三菱UFJ信託銀行さんは、「金の果実」シリーズによって、どのようにして収益を上げるのでしょうか?
信託報酬や監査費用などの費用をいただくことになっています。金の場合なら信託報酬は年0.42%(2011年3月2日現在)です。正直申しまして、貴金属の保管費用もかかり、そんなに儲かるものではありません。当社としては、ここで大きく儲けようというよりも、新しい投信を、信託の仕組みを使って提供しよう、社会のニーズに応える今までなかったようなものを提供したい、という思いで開発した商品です。
現物と引き換えができて個人のお宅にも届けるというのは、恐らく世界にも例がなく、日本の運送システムが発達しているからできる仕組みです。今まで投資をしたことがなかった人や、貴金属の地金商に行くのはちょっと敷居が高い、といった人にも安心して提供できる商品です。
売買を頻繁に行う投資家にとっても、持っているだけでいいといった長期投資をしようという人にとっても役立つような、いろんなスタイルの人に支持してもらえる商品だと思っています。
また、実はこの商品、開発コード「日の丸」といいまして、投資とは別の目的もあるのです。
――単なる金融商品というわけではないのでしょうか?
さきほど、申しましたように、ETFの証券を発行する前に必ず金・銀・プラチナ・パラジウムの現物を倉庫に保管するという仕組みですから、投資する人が増えて純資産残高が増えると、国内備蓄効果とか、戦略効果といった効果があります。銀は太陽電池や液晶パネルなどに使われ、プラチナとパラジウムは自動車・バイク用の触媒などとして使われます。ですが、例えばプラチナやパラジウムは、掘れる国がロシアと南アフリカに偏っていて、いざという時、つまり有事の際は、輸入がピタっと止まってしまう恐れがあります。
倉庫に保管している貴金属の現物は、三菱商事から委託されたものですが、三菱商事は日本の産業を支えている会社なので、産業に必要な貴金属を日本に積み増しておくという目的もあるのです。いざ輸入が止まった場合、日本国内に現物があれば、個人投資家に売っていただければ、現物を引き出して工業利用できるのです。
――倉庫に現物を積み増すというのは、投資家の利便性だけでなく、日本の産業全体のためにもなるということですね。それにしても、すごい勢いで純資産残高がつみ増されています。
2010年7月2日の上場時の純資産残高は、「金の果実」が約20億円、「プラチナの果実」が約7億円、「銀の果実」が約5億円、「パラジウムの果実」が約3億円でしたが、2011年4月19日時点では、「金の果実」が約159億円、「プラチナの果実」が約9億円、「銀の果実」が約66億円、「パラジウムの果実」が約8億円となりました。
シリーズ全体の目標として、上場後1年の2011年6月末時点で純資産残高200億円を超えればいいなと思っていましたが、4月19日時点ですでに約242億円となり、私どもとしても、やった甲斐があったと感じております。
多様な金融資産のうちの一つとしての保有をおすすめ
――お話を聞いていると、すごくいい商品で、それが理由で実際に支持されているということですが、ウィークポイントというか、弱点みたいなものはないのでしょうか?
配当やクーポンといったものはないので、また、値動きもあるので、この商品に全ての投資資金をつぎ込む、といった商品ではないと感じています。預金もあり株もあるといった中で、一部分この商品を持っておく、といった使い方ができるのではないでしょうか。
――なるほど。それでは今後、この商品をどのように発展させていかれたいと思っていますか?
将来的には、機関投資家の方にも投資していただけるとありがたいと思っています。貴金属は国内株式や海外株式とも値動きが違いますし、米国の年金基金などは、運用で金を一部持っているようです。他のものを組み合わせて持っていただけると、よりよいポートフォリオが組めると思っています。
また、三菱UFJ投信が、「金の果実」を主要投資対象とするファンド『三菱UFJ 純金ファンド』(愛称 : ファインゴールド)を設定しており、店頭で購入することができます。ETFという形では分かりづらいよなぁ、という人向けにも、いろんな形で支持していただけるようにしていきたいと思っています。
――本日はありがとうございました。