2010年7月2日に東京証券取引所に上場した貴金属ETF『金の果実』シリーズ。「金の果実」「銀の果実」「プラチナの果実」「パラジウムの果実」を合わせた純資産高は、上場時の約35億円から、2011年4月18日時点で約242億円となり、約7倍となっている。同シリーズの管理会社である三菱UFJ信託銀行 フロンティア戦略企画部 統括マネージャーの星治氏に、その人気の秘密を聞いた。

三菱UFJ信託銀行 フロンティア戦略企画部 統括マネージャーの星治氏

貴金属ETF『金の果実』シリーズは「現物」の"預り証"のイメージ

――不勉強で申し訳ないのですが、まず、一般の投資信託とETF(上場投資信託)の違いから、教えていただけますでしょうか?

一般の投資信託は、投資信託法に基づくもので、有価証券などで運用するものです。投資家は銀行や証券会社の店頭やネットで買って、運用期間がある程度たって現金にしたいなと思ったら、解約してお金をもらう仕組みです。これを投資信託の運用側から見ると、お客様からお金を預かってそれを運用し、お客様が現金にしたいと言ったら、解約してお金を返すのです。

これに対し、ETFは、「Exchange Traded Fund」の略で、いろいろな種類のものがありますが、市場で交換(取引)ができる投信といえます。ETFは取引所に上場してまして、日本ですと東証、大証、名証などに上場し、証券会社を通じて、株と同様に売買します。購入した後現金化したい場合は、解約するのではなく、市場を通じて売却します。株の売買は、会社の一部分である株を売買しますが、ETFの売買は、投信の一部分を売買すると考えたらいいでしょう。

――『金の果実』シリーズは貴金属ETFということですが、一般のETFとどのような点で異なるのでしょうか?

『金の果実』シリーズは、3つの点で、一般のETFと比べて特徴があります。第1に挙げられるのが、ETFの多くが投資信託法に基づくのに対し、「金の果実」シリーズは、信託法に基づいています。また、第2点として、一般のETFが有価証券などを運用するファンドを売ったり買ったりするのに対して、「金の果実」シリーズは、金や銀、プラチナ、パラジウムの「現物」を預かって、その見返りとしての預り証みたいなものを取引するのです。現物との引換証みたいなものです。普通の投資信託やETFですと、有価証券を運用している証拠みたいなものを取引し、その運用の成果をもらうようなイメージですが、「金の果実」シリーズは、金庫に預けてある現物の預り証を持っているようなイメージです。

一般のETFと異なる第3の特徴は、現物(金とプラチナ)がほしい人には現物と引き換えられる仕組みがある点です。例えば金ですと、1kg以上5kgまででしたら、証券会社を通じて家にお届けすることができます。外国には似たような貴金属ETFがあって、東証にもSPDR(スパイダー)が上場していますが、金はロンドンの倉庫に預けてあって、日本の投資家が受け取るのは事実上不可能です。

銀とパラジウムに関しても、一般のお客様には合いませんが、億単位の大口の場合にはお渡しできるようにしていて、倉庫に取りに来ていただける方には、お渡しすることも可能です。

金やプラチナ、銀、パラジウムは、日本国内の某所にある倉庫に預けてあって、倉庫に現物が入っていることを確認してから、市場にETFの口数を増やす仕組みになっています。倉庫は厳重に管理されていて入るのも大変で、監査法人も入れて数量を確認しています。現物との引き換えを希望するお客様に届ける際には、保険付きの宅配便でお届けします。

『金の果実』シリーズの仕組み

――ETFを取引すると同時に、金や銀の現物を取引しているようなイメージですね。金や銀の現物を取引するのに比べて、ETFとして取引することに、どのようなメリットがあるのでしょうか?

まず、取引所(市場)で売買できる点が挙げられます。ネットなどで、好きな時間に好きな単位で売買できるのです。金も銀も貴金属商に行けば売買できますが、小口でリアルタイムで売買するのは、なかなか難しいです。また、金や銀の現物を取引をするのに比べて、ETFですと自分で保管しなくていいというメリットがあります。また、売却する時も、現物だとすぐに売りたいといっても難しいですが、ETFなら市場を通じてすぐに売却できます。

税金面での利点もあります。株と同じ特定口座に入れておけば、特定口座の中で税金の計算が完結します。株で損が出た時に「金の果実」シリーズで利益が出れば、相殺されます。株の値動きと貴金属の値動きの仕方は異なるので、こうしたことも起こりやすいのです。地金商で現物を売買すると、譲渡所得になるので、株とは別に課税されることになります。