お笑いユニット、ザ・プラン9のなだぎ武が芸歴20周年を記念して書き下ろした初の自伝本『サナギ』(ワニブックス刊)が話題となっている。中学時代に受けた壮絶ないじめから、他人との会話や食までも断ったひきこもり生活、そこからもがきながら這い上がってきた過去を本書で初めて明かした心境や、"ディラン"など変幻自在なネタで知られるピン芸の秘密、今後の野望についてなだぎに話を聞いた。

1970年10月9日生まれ。大阪府出身。2002年にお笑いユニット「ザ・プラン9」に加入。ピン芸の評価も高く、2007年、2008年の「R-1ぐらんぷり」で2連覇を達成した。 拡大画像を見る

――初めて自伝本を出すことになった経緯は?

なだぎ「雑誌でちょっとしたコラムを連載してたんですけど、その担当の方に「なだぎさんはテレビであんまり自分のこと話さないタイプなので知りたい。自伝を書いてみませんか?」と言われまして。僕の過去なんて誰も興味ないやろと思ったんですけど(笑)、せっかくの縁なので書いてみようと思いました」

――執筆にはどれぐらいかかったんですか?

なだぎ「約1年ぐらいかかってしまいましたね。そのときを状況の思い出しながら書くので、昔の自分に没頭しすぎて脳みそが疲れました。いろんなことがフラッシュバックしてきて、当時の気持ちに戻ってしまうんです。あんまり疲れて、人としゃべるのもめんどくさくなってた時期もありました」

――完成した本を読んでみて、どんな感想を持ちましたか?

なだぎ「自分が歩んできた線をなぞられてるようで、むずがゆい感じですね。でも、本になったことで一旦僕の手を離れているので、「こんな人なんや」と自分を外から見る感覚もある。それでもやっぱり恥ずかしいですよ。できることなら誰にも読んで欲しくない……あ、そんなこと言ったらダメなんですけど(笑)。ただ、これが今の自分に繋がってるんだなという感じは書いてるときからありました。今、僕がやってるネタにしてもそうですし」

――なだぎさんのピン芸のネタは、誰もが子どものころに夢中になるゲームやアニメ、テレビ番組の記憶に繋がってるものが多いですね。

なだぎ「僕はずっとテレビが好きで、おもしろいと思うものがいっぱいあったんですけど、それを周囲に向けて表現するタイプではなかった。その蓄積を芸人になってからネタでドンと爆発させてるのかなと思います。芸人はそんなやつが多いんですよ。ナインティナインの岡村や藤井隆、ココリコの田中とかもそう。普段はおとなしいけど、自分の土俵を提示されるとそこで爆発するっていう。蓄積してきたものを表現する、自分の居場所を探してたのかなと思いますね」……続きを読む