使えるねっとのVPSサービスは、FX投資家の間で、大人気となっている。VPSサービスというのは「Virtual Private Server」の略で、簡単に言えば、インターネットの向こう側に24時間動き続けてくれるパソコンをレンタルするようなイメージ。そこに自動売買プログラムをインストールすれば、自分のパソコンの電源をオフしても、売買プログラムは24時間動き続けてくれることになる。手間がかからない、自分のパソコンをトレード以外のことにも使えるようになる、新たにパソコンをもう一台買うよりも割安ということから、システムトレードをしたいFX投資家から注目されている。

その人気のために、今回ひまわり証券が提携し、ITが苦手な投資家にもわかりやすい情報提供を行っていくことになった。また、3月にはひまわり証券のトレードツール「トレードシグナル」が、使えるねっとのVPS上で動作するようになる。

今回は、このVPSサービスがFX投資家に人気になったいきさつをご紹介する。使えるねっと 取締役 執行役員のジェイムス・ポーティアス氏に教えていただいた。

使えるねっと 取締役 執行役員のジェイムス・ポーティアス氏に、VPSサービスがFX投資家に人気になったいきさつを教えていただいた

VPSサービスは、「レンタカー」を借りるイメージ

FXはご存知の通り、月曜日の早朝から土曜日の早朝まで、市場は24時間連続して動いている。そのため、自分のパソコンで自動売買プログラムを動かすのはなかなか大変だ。月曜から土曜日までは電源を切ることができない。性能のいい高価なパソコンを使っていればいいが、性能があまり高くないノートパソコンなどでは、他のプログラムを動かすと、自動売買プログラムの動作が不安定になってしまうこともある。ちょっとインターネットで映画を見たいとか、デジカメの写真を保存したいとか、別のことをすると、パソコンそのものがフリーズしてしまって、起動し直さなければならないこともある。

さらに、パソコンのソフトがおかしくなってしまったり、ハードウェアが故障することもある。そうなれば自分でソフトを再インストールしたり、修理に出したりしなければならない。その間は、当たり前だが、トレードができなくなってしまう。

ところが、VPSを利用すれば、パソコンを1台新しくレンタルしたのと同じ使い勝手だから、自分のパソコンは使わないときには電源を切っておくことができるし、別の用途に使うこともできる。VPSのプラットフォームはWindowsで、リモートデスクトップ機能を使えば、自分のパソコンから使い慣れたWindowsを操作して、自動売買プログラムなどをインストールしたり設定したりすることができる。さらには、スマートフォンからも操作をすることができる。

要するに、マイカーを持つか、レンタカーを利用するか、というような話なのである。マイカーは確かにいつでも自由に使えて便利だが、故障したら修理しなければならないし、洗車もしなければならない。税金を支払ったり、保険の手続きをしなければならない。

一方で、レンタカーなら乗るだけで、他の面倒なことは一切レンタカー会社がやってくれる。ただ、自動車の場合は、レンタカーを24時間借りっぱなしにしたら、マイカーをもつよりも高くついてしまう。VPSの場合は、新しくパソコンを1台を買うよりも、レンタルした方がはるかに低価格なのだ(月額1880円~)。面倒はなく、安価。24時間稼働。自動売買プログラムでのシステムトレードを考えるなら、VPSを利用する方が賢いともいえるかもしれない。

マイクロソフトからWindowsサーバ事業の打診

使えるねっとは、もともと企業向けのレンタルサーバ事業を行っていた。企業向けのレンタルサーバは、Windowsではなく、Linuxというプラットフォームを使っている例が多い。インターネットの黎明期には、Windowsはまだ不安定でフリーズしてしまうことが多く、24時間稼働しなければならないインターネットサーバには安定性の高いLinuxを使うのが一般的だった。そのため、使えるねっともLinuxサーバーを企業向けに提供する事業を行っていた。

「ある時、マイクロソフトからWindowsのサーバ事業をやってみないかという話がきました。正直言って、エンジニアたちは否定的でした」。

この頃には、Windowsの不安定さもほぼ解消されていて、Windowsを嫌う理由は特になかった。しかし、すでに世界中のインターネットサーバのほとんどはLinuxを使っていて、わざわざWindowsに乗り換える理由もなかった。Windowsサーバのレンタル事業をやっても、そう成長するとは思えなかったのだ。「でも、Windowsはパソコンでは広く使われていて、一般の人からするとインタフェースが使いやすい。そして、なによりマイクロソフトと仕事をすることは、会社の今後にとってプラスになると思いました」。

そこで、モニター利用募集という形で、どの程度のニーズがあるのか見極めながら事業を進めていくことにした。ところが、2009年6月に、インターネットで数十名分の有料モニター募集をしてみたところ、数分で完売してしまった。あわてて、募集枠を増やすが、それもすぐにいっぱいになってしまう。結局、200名まで拡張したが、数日で完売。大変な人気だったのだ。「びっくりしました。なんでこんなに人気があるのか、その理由がまったくわかりませんでした。それで調べていったら、FX投資家の方たちが利用しているということが分かったのです」。

特に2008年に、「MetaTrader4」が登場していたことが大きかった。読者はすでにご存知だと思うが、MetaTraderはロシアのMetaQuotes社が開発したトレーディングソフトウェアだ。さまざまな相場の分析が出来るだけでなく、簡単な言語を使って、自動売買プログラムを作成することができ、MetaTraderに対応している証券会社であれば、そのままリアルな発注、決済ができるというものだ。MetaTrader用の自動売買プログラムも多数販売されている。

つまり、MetaTraderをパソコンにインストールして、自動売買プログラムを動かせば、完全自動売買ができるようになっていた。しかし、自分のパソコンで完全自動売買をするには、24時間つけっぱなしにしなければならない。そこで、完全自動売買をしたいFX投資家たちが使えるねっとのVPSに目をつけたのだ。

「日本人のIT力はとても高いと思います。米国などでは確かに先進的な人はITを使いこなしていますが、そうでない人もたくさんいて、両極に分かれていますが、日本人は普通の人がITを使いこなしている。弊社のVPSが成功したのも、FX投資家の皆さんがブログやSNSなどで紹介した口コミの効果が大きいと考えています」。