国際色豊かな使えるねっと

それに納得できなかったポーティアス氏は、会社を辞め、ジャーナリストの道を歩み始める。始めは、フリーの翻訳家で、仲間を集めて翻訳チームを作ったりした。その後、英語ビジネス誌「ジャパン・インク」の編集部に入り、編集や記事執筆をした。「すぐに責任者となり、別の雑誌を買収して、売上を10倍に伸ばしました。しかし、問題は、紙媒体から電子媒体に早く移らなければならないことです。出版業は電子媒体を避けて通れません。それで、サーバ事業をやっている企業を調べていって、使えるねっとと出会ったのです」。

「使えるねっとに入社すれば、自分の能力を最大限に発揮できるなと思った」と語るポーティアス氏

ポーティアス氏が、当時の使えるねっとという企業を見たときに感じたのは、「エンジニアばかりで、社内のコミュニケーション、社外へのパブリックリレーションが、あまりできていない」ということだった。ボーティアス氏は、翻訳チームを統括してきたり、編集部を統括してきたりと、チームのコミュニケーションをうまくとっていくスキルを身につけてきた。「ですから、使えるねっとに入社すれば、自分の能力を最大限に発揮できるなと思ったのです」。

ここまでの話を聞くと、一般的な日本人とは発想が異なることに気づく。多くの日本人は「できれば一生日本で暮らしたい」と考えるし、「安定した終身雇用的な企業に入社できたら、多少不満があってもがまんんして勤めあげよう」と考える。転職するときも「その会社がすでに持っているスキルを学びたい」と考えてしまい、ボーティアス氏のように「この会社は、この部分が欠けているから、私が活躍できる」という発想にはなかなかならないのではないだろうか。日本的な発想がまったく悪いとは思わないが、ポーティアス氏に学ぶべきことは多いだろう。

ポーティアス氏だけでなく、代表取締役のフリッシュ氏も、発想は日本人と異なる面も多い。例えば、使えるねっとでは毎週金曜日の昼食は無料で、全員で2時間以上かけてゆっくりとおしゃべりをしながら、食事を楽しむ。「オーストラリアやニュージーランドでは食事をとても大切にしますから、毎日そうなんですね。さすがに日本では毎日はできませんけど」。

これも、ただニュージーランドの習慣を持ちこんだというだけのことではない。「休憩と仕事のメリハリをつけた方が仕事の効率が上がる」「社内コミュニケーションを円滑にする」「会社を楽しくして、優秀な社員ができるだけ退職しないようにする」といった合理的な計算があってのことなのだ。使えるねっとは、外資企業でもない日本企業でもない。マルチ・カルチャー企業なのだ。

次回は、使えるねっとのVPSサービスがどのようにして投資家に人気となったのか、その秘密をご紹介したい。