業界未経験が逆に強みとなる
どの業界でもそうだが、業界内での通例というものが存在する。飲食業界でもそうだ。しかし、飲食店での修行経験のない光山さんは、それをほとんど知らなかった。仕入れルートを自ら確立したり、内装に関しても言い値ではなくみっちり値段交渉を行ったり。独立開業の話はたくさん聞くが、こういうケースは珍しい。「おかしいと思ったことはきちんと指摘する。ただ店のため、お客さんのためになるということをしようと思っただけ」と光山さんは言うが、インタビューを通して、そういったストレートな言動によって心を打たれ、協力してくれる人や集まってくる人も多いとわかった。
行動力や瞬発力といった要素も成功の要因だったと思うが、光山さんの"人間力"こそが最大の鍵だったのではないかと感じる。
収入が下がっても店をやりたいのか
脱サラ、独立開業。憧れる人も多く、「店をやりたい」と光山さんの元を尋ねてくる人もいる。しかし「いつやるの? 」と聞くと、その大半が決まって「3年ぐらいかな」と答えるのだそう。「そういった人は大抵口だけで、本当にやりたいと思っていない」と光山さんは厳しい。いつまでにお店を立ち上げると決め、それまでにどれだけの時間的余裕があり、一体何ができるか、ということを具体的に考えていないと無理だというのだ。逆に、「自分の未来予想図を描くことで、夢への距離が縮まります。飲食店を成功させるか失敗してしまうかというのは確率の問題。具体的なビジョンを持っていればそのために努力もでき、成功の確率も少しずつ上がっていく」と話す。
そして、開業希望者には「収入は、いまもらっている給料より下がりますよ」と必ず言う。「例えば、現在月に30万円という安定した収入があったとして、独立後は死に物狂いで働いても自分の収入として手元にそれより少ない金額しか残らなかったらどう思うか。『やりたいことをやって、お客さんと楽しく過ごせて、こんなにもえらえるのか! 』と考える人。そして次の月は自分の収入が2万円多くなった。『そのアップした2万円を店のため、お客さんのために使えないかな』と考える人が飲食店開業に向いていると思います」。
この考えの下、お客へ利益を還元しているので、『わ』をはじめ光山さんの店は、長年繁盛し、お客の心をグッと掴んでいるのだろう。
ロイヤリティ制度のないFCオーナーも募集中
これまでは、ホルモン焼き業態を中心に展開してきたが、今後はカジュアルにワインを楽しめるバル業態に力を入れていく予定だ。煮込みやパテ、リエット等の惣菜類をセントラルキッチンでまとめてつくり、それを各店に配送。厨房ではそれほど調理する必要がなく、調理経験がない人でも独立しやすいスタイルを構築した。
そういった業態は、吉祥寺の「がぶ飲みワイン オーツキ食堂」など都内で既に3店舗を展開。ホルモン焼き店のような"中毒性"のある業態ではないが、その分デイリーに使いやすく、幅広い客層の支持を得ているという。FC展開も行っており、その場合は開業時に取り組み料として150万円を払ってもらう。既存のFCのようなロイヤリティはなく、明朗会計かつFCオーナーにとってはやる気が出る方式だ。
いま力を入れているバル業態の「がぶ飲みワイン オーツキ食堂」。ワインはボトル(2,000円~)もグラスも種類が豊富。肉系メニューを中心にした惣菜類が気軽に楽しめる。客単価3,000円弱。写真上は「男のハラミステーキ」。たっぷり300gのボリューム感、ライスつきで1,500円 |
東京だけではなく、京都や新潟にも店舗を展開中。『わ』の店名は人の"輪"を意味するという。これからも光山さんからどんどんその"輪"が広がっていくことだろう。