羽村技術センター時計事業部モジュール開発部担当部長 中島悦郎氏

Bluetooth Low Energy対応の時計と通信する相手としては、すでにさまざまな対応機器が想定されているが、今期待されているのはスマートフォンをはじめとする携帯電話だ。特にAndroid端末に期待しており、携帯電話と時計の間でBluetooth Low Energyを使って情報をやりとりすることで、さまざまな機能を実現しようとしているという。

今後登場が予定されているBluetooth Low Energy対応チップは、PUIDグループが作成するプロファイルは基本的にすべて搭載していく方向のようで、このプロファイルを追加することでさまざまな機能が実現できる。カシオでは現在、4つのプロファイルを想定しており、「TIME」「ALERT」「FIND-ME」「PROXIMITY」の4種類になるという。

TIMEは、携帯に設定されている日時を腕時計側に反映させるプロファイル。携帯は一般的に、電波から時間情報を得て時間合わせを自動で行ってくれるため、たとえば海外に行ったときでも、自分で時間を合わさずに、現地の時刻に自動設定される。その情報を時計側に送ることで、腕時計の時間合わせも不要になる。

ALERTでは、電話やメールの着信を腕時計側に表示してバイブで知らせることができる。その時に腕時計を軽く叩くと、着信音のミュートといったこともできるので、会議中に急に着信音が鳴っても、腕時計を素早くタッチしてミュートする、といった使い方ができる。

「TIME」「ALERT」「FIND-ME」「PROXIMITY」以外にもプロファイルを追加することで世界は広がる

メールの件名なども確認できるので、携帯をバッグの中から探し出さなくても、腕時計を見る動作だけでメールの重要性を確認できるし、いちいち携帯を取りだして使わなくても済むため、「特に電力消費が激しいスマートフォンの電池寿命にも貢献できる」(奥山氏)という効果も期待できそうだ。

FIND-MEは、腕時計から携帯のアラームを鳴らしてどこにあるかを探すという機能。PROXIMITYでは、例えば、携帯から時計が離れてリンクが外れると、アラームを鳴らして警告したり、PCに腕時計を付けて近づくとロックが解除され、離れると自動でロックする、といった機能も実現できるという。

さまざまなプロファイルによって機能が提供され、それを利用する機器が増えることで、幅広い用途が実現できるというのがBluetooth Low Energyの特徴だ。携帯やPC以外にも、ゲーム機や自動車、健康機器など、これまでにBluetoothが搭載されなかったような機器にも応用範囲が広がるだろう。

アプリ開発次第では、「ゲームのコントローラー、車や家の鍵として腕時計を活用することもできます」(中島氏)

Bluetooth Low Energyのチップ自体は、カシオの女性向け耐衝撃ウオッチ「Baby-G」のような小型の腕時計にも問題なく搭載でき、「現在、電波時計が実現できているサイズの腕時計であれば搭載できる」(中島氏)。

プロファイルを追加しただけでは、Bluetooth Low Energyの真価は発揮されない。それを利用するアプリケーションをどのように拡大していくかという点も重要だ。腕時計を付けて近づくとPCのロックが解除されるといった機能は一例で、ガス欠のような車の機器情報を表示したり、腕時計のボタンを押すと子供向け携帯のアラームを発信したりといったさまざまなアイデアが想定できる。

高齢者が転倒した際に腕時計のモーションセンサーで察知し、スマートフォンから、自動的に登録番号に発信するセキュリティ機能なども考えられる

また、腕時計の各種センサーを使って、ジョギングやダイビング、登山などで記録した情報を、あとからまとめて携帯に転送し、ログとして保存するといった使い方も提案しており、「まずはスポーツ系の腕時計から搭載したほうが、よりアプリケーションが広がるのではないかと考えている」(奥山氏)そうだ。Bluetooth Low Energyを含むBluetooth 4.0搭載機器が出始める「年末から来春にかけて」(同)に製品を投入予定だ。……腕時計の「3つ」のメリットとは?