Engst氏のセッションでは、Mac OS X Lionのリリース時期と価格が話題になった。毎年5月・6月ごろに開催されるAppleの開発者カンファレンスWWDCでLionのベータ版が配布される可能性が高いが、Lionの場合はフルスクリーンモードのようなアプリケーション開発者にとって大きな変更が加わる。また、Windowsに大きな変化がない現状で、AppleはMac OS Xのアップグレードを急ぐ必要はない。むしろAndroidとの競争に直面するiOSの次期版を優先すべき状況にある。ゆえに「夏を8月までと定義すれば、(昨年の10月のイベントで予告した)2011年夏リリースは難しいのではないか」というのがEngst氏の予想だ。
価格に関しては、Leopardが129ドルだったのに対してSnow Leopardへのアップグレードは29ドルだった。Snow Leopardは「Leopardのブラッシュアップ版」という見方もできるが、OSの最新版、Macの最新モデルへのアップグレードを促す戦略にAppleが舵を切ったとも考えられる。そこから、iOS同様に無料アップグレードのパスが用意される可能性もあるとEngst氏は指摘した。Lionではマルチタッチ・ジェスチャーが強化される。Mission Controlの呼び出しやアプリケーション/スクリーンの選択などがジェスチャーで可能になれば、マルチタッチ・ジェスチャーを使えるかどうかでMacの使い勝手がずいぶんと変わりそうだ。例えばMacBook Proであっても2007年以前のモデルのトラックパッドではマルチタッチ・ジェスチャーを使えない。最新のOSにアップグレードすれば、最新OSの機能を十分に引き出せる最新ハードウエアが欲しくなる。このサイクルが活発になれば、最新の利用体験でユーザーが統一され、結果的にプラットフォームの評価が向上する。こう考えると、最新OSを低価格または無料で提供する価値はあるというわけだ。
Leopardは129ドル、Snow Leopardのアップグレードは29ドル。しかしiOSユーザーの多くは無料でメジャーアップグレードを受けられる |
「Back to the Mac」を節目にバージョン表記が変わるのではないかという予想も多数。現状でも数字よりネコ科の動物名の方が分かりやすいから、製品名からバージョン番号がなくなるという意見も |
iPhoneやiPad、MacBook Airのようなストレージが比較的小さいモバイルデバイスを便利に使えるようになった要因の1つに、DropboxやSugarSyncなどオンラインストレージ・サービスの登場による簡単なファイル転送の実現が挙げられる。AppleもMobileMeを提供しているが、有料 (年額9800円)であり、Dropboxよりも使いにくいのが現状だ。MacとiOSデバイスを連携させるソリューションとしてMobileMeを改善し、またすべてのMacおよびiOSデバイスユーザーが使える無料版を提供するべきという声が会場から上がった。
最後にDashboardについてEngst氏が、iOSのエミュレータとしてiOSアプリが動作するようにしてはどうかと提案した。マルチタッチ・ジェスチャーがMacでも当たり前になるのならば、Mac上でもiOSアプリを使えるようになる。さくさくと動作する軽量なアプリに限られるとしてもiOSアプリの資産は大きく、「Macユーザーが (Dashboardウイジェットよりも) 効果的かつ機能的にすばやく情報にアクセスできる手段になる」とした。