最後に登場したのは朝日新聞社の竹原大祐。コンテンツ事業センターに所属し、朝日新聞・テレビ朝日・KDDIの三社による携帯向けニュース配信サービス〈ニュースEX〉を企画。構築やコンテンツ制作にも携わった。
Guest 03 竹原大祐(朝日新聞)
1995年、朝日新聞社に入社。現在、コンテンツ事業センター。経営業務、通信技術、映像、アサヒコム編集部、山形総局、デジタル取材班を経てKDDIと提携した有料配信「ニュースEX」モデルを提案。10年にはソニー、凸版印刷、KDDIと提携した電子書籍事業の実務交渉を担当。98年から動画業務を実践するなど、新たなデジタルメディアの創造に尽力
「新聞社は進化できるのか。そのためには、新聞社の本質を、一度、振り返って、確認しておく必要があるのではないかと考えています。逆に、背骨の部分さえしっかりしていれば、どんどん変わっていけるのではないか。そうも思っています」
朝日新聞の創刊は明治12年(1879年)。当時の標語は「善悪を書きわけ、社会の様子をそのまま生きた歴史として言葉で映し出す」だったという。竹原は新聞社の新聞社たるゆえんを「言葉で繋いでいくこと」に見いだしている。そこにジャーナリズムの本質があるのだ。
「いままでの新聞はIP企業でした。情報(Information)を紙(Paper)に載せて、社会に届けていたわけですね。携帯性や簡便性という意味では、紙は最強のモバイルだと思いますが、ただし、もはや紙だけにこだわる必要はない。情報技術(Technology)を駆使して、IT企業に変わるべき時期に来ている。デバイスが増えれば増えるほど、さまざまな伝え方が可能になるのです」
試みのひとつが〈ニュースEX〉。携帯端末向けのプッシュ式メディアだ。これまで紙の新聞は朝刊と夕刊で情報を伝えてきた。逆に言うと、1日に2回しか機会がなかったということになる。
「ニュース配信は、1日あたり200本以上。いままで朝夕2回だけだったものが、リアルタイムでどんどん出していける。これは画期的なことです。PCではなく、紙のように携帯性に優れたデバイスを活用しているという意味で、我々は新しい速報メディアを開発したと自負しています。その根本にあるのは“言葉で繋いでいくこと”。この先も言葉の力で、人々と社会を結びつけていきたいと考えています」