――監督の目指す"面白い映画"とは、具体的にどういうものを指すのでしょうか。

園「何年か前、ワールドカップの試合をスポーツバーで観戦して、周りの人たちが熱狂している姿を見た時、『自分はこのくらいのものを作らないとダメだ』と思ったんです。サッカー中継と同じくらい面白くて、人を惹きつけ、時間を忘れさせるような映画を。これが原則というか大前提として僕の中にはまずあります。それが笑えたり、泣けたりするのは後からついてくる評価。結果的にどこに結びつくのかは観客に任せればいいのであって、泣ける試合かもしれないし、爆笑の試合かもしれないけど、僕はとにかく面白い試合を見せたい」

――それでは、最後に2011年の抱負をお聞かせ下さい。

園「日本映画だけでなく、ヨーロッパやアメリカなどの海外の映画もどんどん撮りたいですね。もちろん、日本映画も撮りますけど、そうやって行き来してフィードバックさせることで、日本映画を活性化することが出来ないかなって思うんです。ハリウッドだって実際は海外の監督の寄せ集めだったりしますからね。撮りたいテーマはまだまだいっぱいありますし、日本と海外の垣根を越えて幅広く活動したいです」

――ちなみに、プライベートの目標は?

園「結婚して子供を持ちたいですね。家族の映画ばっかり撮るくせに家族を持ったことないので、自分の手で家族を構築してみたいです。で、そこからまた“家族”を考えてみたい。まぁ、僕だけの問題じゃないのでなんとも言えませんが、一応、宣言だけはしようかと。でも、『結婚してないのに結婚を語るな』って言われて、いざ結婚したら『結婚した奴に結婚は批判出来ないだろう』って言われそうな気はしますけどね(笑)」

――でも、監督がもし実際に家族を持ったら、作品に変化が生まれそうで興味深いです。

園「結婚したら意外とものすごく方向転換して『男はつらいよ』的なヒューマンドラマを撮ったりするかも(笑)。小津安二郎だって年取ってからあの域に達したわけで、若い頃には『エロ神の怨霊』っていう映画撮ってましたし。『エロ神』ですら面白いのに、そこに『怨霊』が加わりますからね。どんな映画なのかものすごく興味あります。結局、人間、どうなるかなんて誰にも分からないということです」

言うまでもなく、すでに海外からも高い評価を受けている園監督だが、この作品でさらなる注目を集めることは間違いない。諦観にも似たどこまでもクールな視点と、自分の作品を見る人を熱狂させたい熱い想い。相反する二つを映画製作のパワーに変えながら、今年も彼は突き進んでいくだろう。

『冷たい熱帯魚』は、テアトル新宿ほかで公開中。