今回、平井氏の数々のコメントのなかで気になったのは、プレイステーション 3は家庭のマルチメディアの中枢を担うハードと位置づけ、「NGP」は携帯ゲーム端末という位置づけを強調していた点だ。ここで思い出すのが、プレイステーション 3発表当時、プレイステーション 3はゲーム機ではないというスタンスをとったがために、ゲームユーザーを混乱・失望させ、後々ゲーム用ハードとして強調され直すという顛末だ。
「NGP」はその高性能さゆえに、プレイステーション・ポータブルでもすでにクリアされているビデオコンテンツなどの動画視聴も当たり前のようにできるはずだが、今回の発表ではそれらには一切触れなかった。これは筆者の想像だが、ファーストインプレッションは純粋に"携帯ゲーム機として認識してもらいたい"、というSCEの思惑があったのではないだろうか。
「NGP」の開発コンセプト
平井氏は「NGP」によって、「これまでプレイステーション・ポータブルが追い続けてきたゲームの世界、没入感をもって楽しめる究極のポータブル型エンターテインメント体験をさらに追求し、市場を拡大していくのは私たちの使命」、さらに「時間や場所を選ばず、クオリティの高いゲームをプレイすることを可能とします」と語っている。そこで挙げられたのが下記の5項目である。
1. Revolutional User Interface
2. Deep Entertainment Experience
3. Location-based Entertainment
4. Converging Real and Virtual
5. PlayStation Suite Compatible
下記では、この5項目を詳しく紹介していく。
Revolutional User Interface
実機で行われたデモプレイでは、平井氏に招かれて登場したSCE World Wide Stuidoの吉田氏が『アンチャーテッド』のNGP版が使用された。このとき吉田氏は、有機ELディスプレイの視野角が確認できるよう本体を縦横に傾けたが、かなりの視野角の広さを確認することができた。本体のスーパーオーバルデザインの採用については、長時間快適にプレイするための仕様とのこと。また、「ユーザーの皆さんからもっとも多かった要望は、右アナログスティックを付けてくれというものだった」とし、プレイステーション・ポータブルのスライド式アナログスティックとは違う、デュアルショックと同じような操作感を有した倒しこむアナログスティックを新開発・採用した理由も述べられた。
『アンチャーテッド』のNGP版では、キャラクターの移動は左アナログスティック、カメラの移動用に右アナログスティックを使用。段差を上るときに、タッチパッド越しにキャラクターをなでると段差を乗り越えるアクションが行われ(ボタン操作でも上るとのこと)、ツタにぶら下がって亀裂を越えるシーンでは本体を上下に揺らして勢いをつけ飛び越える、銃の照準を方向キーやアナログスティックを使用せず本体そのものを動かすことで行えるなど、ゲーム上でのジャイロセンサーの利用法の一例も紹介。さらに背面タッチパッドの利用法の一例も紹介。吉田氏が左右の指で交互に背面タッチパッドをなぞると、キャラクターがツタを上っていくシーンも会場の大型スクリーンに映し出された。
『Little Deviants(仮題)』では、悪者のDeviantsを倒すために背面タッチパッドを使ったゲーム性を紹介。吉田氏が背面タッチパッドに触れるとリアルタイムで画面のフィールドが隆起し、傾斜が形成されたほか、指2本で表と背面タッチパッドを挟み込むことでキャラクターを弾くなどの操作が披露された。
Deep Entertainment Experience
ソーシャルコネクティビティーを表す「NGP」のコミュニケーション機能「LiveArea」は、ゲームの楽しさを多くのユーザーと共有し、より活発なコミュニケーションを可能にする場で、ユーザーはネットワークを通じてSCEおよびソフトウェアメーカー各社から提供されるゲームの最新情報が取得可能になる。また、同じゲームを楽しんでいる他のユーザーの達成状況が、Activity(アクティビティ)として常に更新されるなど、リアルタイムでのインタラクティブ・コミュニケーションを実現するとされている。
ここで島田氏による「LiveArea」のデモンストレーションが行われた。「LiveArea」は、NGP用のゲームへの扉で、ここでゲームが開始可能なほか、「PS Store」にアクセスして有料コンテンツを購入する、他のプレイヤー情報を確認するなどの操作も可能。なお、デモでは『みんなのGOLF NEXT(仮)』が使用され、ホーム画面で「PS Store」をタッチパネルで選択すると、そこにラインナップされている『みんなのGOLF NEXT(仮)』用のダウンロードコンテンツが一覧表示されるなど、より直感的でスムーズな入り口の役割を果たしている。
さらにコミュニティスペースとしての機能も有しており、同じソフトを遊んでいる他のユーザーとのコミュニケーションも可能で、「ホールインワンを出した」「コンテンツを購入した」という実績も表示される。こうした、常にオンラインで新情報が入ってくる機能を実現するために3Gネットワークが必要だったとは、平井氏のコメント。
Location-based Entertainment
Location-based Entertainmentとして紹介された「Near」は、「NGP」の位置情報記録機能を使ったサービス。例えば「NGP」を持ち歩いて、吉祥寺から渋谷、銀座、品川、六本木、芝公園などに移動した場合、その場所によってほかの「NGP」ユーザーがどんなゲームを遊んでいるかがわかるという機能である。データはサーバーに蓄積され、その日の移動範囲の傾向や、ほかの「NGP」ユーザーのゲーム遍歴を確認することも可能。さらに地域ごとの人気ゲームランキングなどもリアルタイムに知ることができ、その場で「PS Store」から購入することも可能になるという。
Converging Real and Virtual
現実と仮想世界の融合であるConverging Real and Virtualの説明では、『みんなのGOLF NEXT(仮)』のデモプレイを通じて、芝生の描写の細かさや一人称視点への切り替え、キャラクターをタッチして話しかけたりするなどの様子を紹介。さらに本体移動による360度の視点移動、本体を縦にして空を見上げるなどのジャイロセンサーを使った画面効果も披露された。
PlayStation Suite Compatible
平井氏は、「今後、PS Suiteによって様々なデバイスがクロスオーバーしていく」とし、PSシリーズに接点のなかったクリエイターにもアピールできると展望を語った。これはAndroid端末向けプラットフォーム「PlayStation Suite」により、プレイステーションのソフトがハードの垣根を越えて、様々なデバイスで楽しめるようになると示唆しているものだろう。