浮いた人件費をメニューに還元!

そして何よりすばらしいのが、このシステムによってメニューの原価率がアップしている点。フードでは43%、ドリンクを含めても38%という原価率は、原価率30%以下が常識のチェーン居酒屋として驚異的な数字である。コストパフォーマンスの高い料理が楽しめるのであれば、こういうスタイルのオーダー方法であってもなんの苦労でもない。

接客面もさすがはワタミ、しっかりと教育が行き届いている。声出しが徹底されており、注文が入った時やメニュー受け渡しの時に元気よく「ありがとうございます! 」という声が響く。厨房もオープンスタイルなので調理姿が見え、活気のある店内となっている。

「仰天酒場」のメニューは、フード約60種類、ドリンク約40種類。フードは、刺身や焼鳥、おでんといった定番系を中心に、すしやカレーなどごはんものもあるので、食事目的でも利用できる。食材は、他のワタミチェーンと共同で仕入れてスケールメリットをいかしているものもあれば、同店限定のものも。「本マグロのアゴ焼」といった希少食材を使ったメニューなどがその例だ。

250円メニューの商品一例。鶏モモ肉1枚を使った「仰天! 鶏ももステーキ串」、ついついごはんを注文したくなる「旨カツ煮」

完成品を仕入れて温めるだけ! といったメニューは扱わず、刺身も厨房で切りつけたり、おでんも店で仕込むなど、調理は本格的。厨房には焼き台があり、焼き魚や焼鳥も注文ごとに焼き上げる。揚げ物のパン粉付けも厨房で行うなど、「最終工程は必ず各店で」というのがワタミグループの基本だという。

ハイボール専用のディスペンサーからハイボールが入れられる。厨房内には焼き台もあって本格的!

ドリンクは、「トリスハイボール」が人気で、「ザ・トリスハイボール」などの定番から、「トリハイ紅茶」、「トリハイ柚子蜜」などアレンジ系も取り揃える。厨房内には専用のディスペンサーが導入されており、シュワッとしてよく冷えたハイボールが楽しめる。ちなみに、「サントリーモルツ」の中ジョッキも250円だ。

また、ラインナップに幅を持たせるために、フード・ドリンクとも500円(こちらも税込! )均一メニューも用意する。フードは10種類弱で、ボリューム感や高級感のある食材を導入。5種盛りの「仰天! 刺身盛り合わせ」など、スーパーで買ってくるより安いような圧倒的お値打ち感のものもあり、より一層の訴求度だ。ドリンクでは「八海山 吟醸」や「久保田 千寿」といった日本酒の高級銘柄も提供。「ついつい500円メニューを頼んでしまうラインナップだね」と担当編集とつぶやく。

本当に仰天してしまうようなお値打ち感の「仰天! 刺身盛り合わせ」。5種盛りで500円。豪華すぎてなんだか恐縮しちゃいます……

現在、平均滞在時間は1時間。当初の狙い通り、"ちょい飲み"利用がメインの様子だ。10月には、2号店となる赤羽店を出店しており、今年度中に5店舗、将来的には300店舗を目指すという。1月には大幅なメニュー刷新も実施しており、リピーターも飽きさせない工夫をしている。今後、新たな居酒屋の流れになれるかどうか、見守っていきたい。