エディフィスの新作であるEQW-M1100は、1/1000秒計測が可能なアナログ式のクロノグラフだ。しかし、針が指し示すための目盛りを文字板上に1000本も描き込むことはまず不可能なため、複数本の針を使って計測結果を表示しているという。特に、小数点以下の3桁を表示するための方法がユニークきわまりない。

モジュール開発部の青木信裕さん

「1/1000秒の単位と、1/100秒の単位、それから1/10秒の単位をわけて表示します。まず、計測中にセンターの赤針が1秒間に1周という猛スピードで回転して、ストップと同時に1/10秒(小数点第一位)を表示。同じく、ストップボタンを押したところで、9時位置に備えられたディスク形状の針が、まず左周りに動いて1/100秒(小数点第二位)を、続いて右周りに動いて1/1000秒(小数点第三位)を表示します」(青木さん)

9時位置のディスク針は、アルミで作られているため軽量である。計測結果はストップボタンを押したあとに表示されるが、計測中も絶えずディスク針は右回り、左回りに動いて、スピード感を演出しているという。ちなみに、このディスク針の計測中の動き方をめぐっても、喧々諤々の議論が交わされたとか。

「そもそも開発の初期段階では、計測中にディスク針は回転せず、静止状態を保つように設計されていました。たとえ計測中にディスク針を動かしたとしても、機能的な意味はありませんから。しかし、せっかく回路の方では、1/1000秒単位のカウントを行っているわけですし、なんとかそれをユーザーが実感できるような形で表現したかった。"じゃあ、動かしてみよう"と、私の方から提案させていただきました」(荒井さん)

「消費電力の問題もありますし、最初は反対意見もありました。しかし、いざ動かすと決まってからは皆が面白がって積極的に意見を出し合いましたね。FLASHを使って針の動きをシミュレーションし、営業やデザイナーにも見てもらいながら、最終的に現在の動きに決めました」(青木さん)

上記にはそのとき使われたFLASHデモのうち、実製品に採用された動作パターンのものを掲載した。デザインおよび、針などの動作が、市販モデルと一部異なっている部分もあるが、参考までに動きを確認してもらいたい。

この動きのほかにもクルマのタコメーターやスピードメーターをイメージし、アクセルをふかしたときの勢いのある針の動きを再現したものなど、合計6通りのパターンが考案されたという。クルマのディスクブレーキを模したというデザインもさることながら、そのダイナミックな動きは見ていて飽きがこないものだ。……立体的で躍動感あふれる多層文字板