野口氏、保険は「苦痛をちょっとでも取り除くための一手段」

Saori氏は、がん保険に入っていたことについて、「母が知り合いの保険会社の人の付き合いという形でたまたま入ってくれていて、そういう意味で私の家族は守られたんですね。私も正直、がんって告知されて頭が真っ白になったんですけれども、現実的にお金ってどうなるんだろうっていうような思いもどこかにあって、大丈夫かなぁ、私お金ないけどとかそういう感じになってしまって。そしたら入院中に、実際に女性特有のがんの保険に入っていたから、あなたは安心していいのよ、手術受けなさいみたいに言ってくれたんで、すごく助かりました」と、その時の心境を明らかにした。

一方、ネクスティア生命で商品開発を担当している野口氏は、両親ともがんで、父親は8年前から肺がんで闘病生活、母親は5年前に肝臓がんで亡くなった経験がある。母親は長崎の原爆で被爆したことがあり、そうした意味でも、「がんは私としても他人事ではない」と話した。

ネクスティア生命 商品企画部長の野口俊哉氏は、「がん保険になぜ入らないかというと、がんは目に見えないものだからだと思うんですね」との見方を示した

がん保険については、「あくまで民間会社がやっている保険ですので、がんになってからでは入れなくて、健康なうちからしか入れません」と説明した後、「将来的には必要かなと思いつつ入らない人も多いと思います。例えば、自動車を買った時、人を轢いちゃったらどうしようと自動車保険に入ります。家を買えば家が燃えちゃったらどうしようということで、必ず火災保険に入ったりしますよね。でもがんになったらどうしようって思わないわけですよ。がん保険になぜ入らないかというと、がんは目に見えないものだからだと思うんですね」との見方を示した。

その上で、「若いうちですと、保険料もまだ安いので、そういう時から入っておくと、経済的負担も少なく入れるのかな」と若い年齢のうちからがん保険に入ることのメリットを説明。「やっぱりがんになると、目の前が真っ暗になるんですね。そこで最初は、保険のこととかお金のことって考えられません。ところがだんだん現実的になってくると、じゃあ仕事やお金はどうなるんだろう、という風になります。でもその時、苦痛をちょっとでも取り除くための一手段ということで、保険ってあるのかなと思います」と述べた。

健康保険や高額医療制度以外にも金銭的負担

さらにSaori氏は、がんになった時の経済的負担が、医療の側面以外にもあると指摘。抗がん剤により脱毛した頭を隠すためのかつらなどを買う費用もかかるとし、「保険でかなり守られているので、親にわがままを言えたって感じなんですね」と当時を振り返った。

野口氏も、健康保険や国の高額療養費制度の適用外でかかるお金について、「母親ががんになった時に、個室代が1日3~4万円、治療に役立つことなら何でもやってみたいということで、鮫のエキスが月10万円かかりまして、そう考えると、実際には費用って果てしないのかなと思います」と説明。その上で、「人によっていろんな考え方があると思うんですが、私は個人的には、本当に必要な保険って、火災保険と自動車保険とがん保険だと思ってます」との見解を示した。

その後も二人の登壇者によるトークが進み、最後に質疑応答の時間が設けられた。「がんになった後、お酒は飲めるんですか?」という質問に対して、Saori氏は、「個人差はあると思うんですけれど、私の場合は、1日1グラスぐらいは飲んでいいよと言われています」と回答。抗がん剤の副作用についての質問には、「抗がん剤による治療中って、まつげもすごく抜けるんですね。ある日、室内にいる時、ライトがまぶしすぎて辛くなっちゃったんです。テレビを見ていても辛くなって、10分見ててもうやっとというか」と話した。さらに、「外を歩いた時に風が吹いてももう無理ですってなっちゃって。鼻毛もないから、空気を吸うにも痛かった」と、壮絶な経験を、しかし明るい口調で語っていた。

イベントでは最後に、質疑応答の時間が設けられた

司会を務めた岡氏は、第1部のセッションのまとめとして、「がんとお金って、すごく密接な関係を持っている。今の段階では、保険に入るって思わなくても、がんって何だろうというところから始めてもらえればいいのかな」と述べ、締めくくった。