「高速連写のおかげで、手持ちでHDR写真が撮影できるのはいいですね。フォーカスもはやいし、スナップカメラとしても使いやすい」

昨今、HDR写真人口が増えていることには、「デジタル写真の見方」が、急速に変わっていることも関係しているようだ。「2年前は、銀塩じゃなきゃ扱わない! と言っていたギャラリーにおいても"デジタル写真"の出番が増えています。デジタル写真、そして僕のようにそれを加工して作品をつくる作家に対する理解も深まっているように感じます」。

そんな流れもあり、「HDRアート」を搭載したEX-ZR10の登場には、人一倍、思うところがあったよう。「遂にきたか! と(笑)。シーンモードが入り始めた頃からデジタルならではの写真表現が追求されてきましたが、メーカー側がストレート写真じゃないものを提案してくる時代になったというのは大きい」と話す。

「これまでは、"純粋"なことが芸術であるという命題があって、写真においても手を加えない、見たままに撮るっていうことが重視されてきたのですが、その垣根が取り払われてきている。極端な話をすると、ストレートな写真ってなに? ってことになるんですが……、この話は長くなるから辞めておきます(笑)」

捨てられたゴミがアートになる

EX-ZR10を使用した感想をうかがうと「もちろん、画像編集によりHDRの効果を作品にどう落とし込むかというところがクリエイティブな作業ですが」と前置きしながらも、「いままで苦労してつくりあげてきたHDR画像がEX-ZR10ではワンシャッターでできるのは驚き」と保坂氏。

「HDRアートは、ふつうの写真とは逆の効果が得られます。生き物や生物、それから食べ物には向いてないですね。おいしそうに写らないから(笑)。

HDR写真は「ソフトによって癖があるけれど、EX-ZR10の画作りはPhotomatixに近い仕上がりといえます。Flickrで検索すると出てくる、ポピュラーなHDR作品に似た作風を楽しめる」 ※EX-ZR10で撮影

逆にゴミ箱の中のゴミは絶対に楽しい! 普段は撮らないようなものに目を向けると発見があります。HDRは輝度差が大きいというイメージがあると思いますが、EX-ZR10に関しては光がまわっているところでの撮影のほうが、面白みのある画が撮れます。ショッピングモールの花屋さんやインテリアショップを撮ってみてもいいかも。あとは反射しているガラスや鏡面。これはHDRアートならではの写真が撮れるので試して損はないですね」と次から次へとHDRアート向きの被写体を提案してくれた。

落ち葉で敷き詰められた地面が圧倒的な存在感を放つ ※EX-ZR10で撮影

これまで写真愛好家を中心に親しまれていた"HDR"アートの世界を一般的なものとする、EX-ZR10。デジタル技術を駆使することにより、写真の新しい楽しみ方を提案する同モデルの魅力は、「HDRって何度撮っても飽きないんですよね」と言う保坂氏の一言に集約されているようだ。