読めないワインリストとズラッと並んだナイフ&フォークにクラクラ
高級フランス料理店。恭しい接客のサービススタッフやずらりと並んだカトラリー、どんな料理かもわからない専門用語連続のメニューブックに意味不明のフランス語の羅列としか思えないワインリストからのプレッシャーにより、変な汗をじっとりかいてしまった。そんな過去を持つ人は少なくないはず。
プライベートでは敬遠していたとしても、結婚式の披露宴や接待などで高級フレンチをいただく機会は出てくる。そんなときに恥ずかしい思いをしなくていいよう、ここではフランス料理のマナーを伝授する。これさえ覚えておけば、披露宴だって高級フランス料理店だって怖くない! 「これであってる?? 」などとビクビクせずに、堂々と料理を楽しめるのだ。
今回教えていただく方
東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート レストランサービス部レストランサービス課ダイニング&バー係主任
佐藤健一さん
同ホテルには1995年入社。コーヒーハウス「ラベニュー」ホールスタッフを経て、今回紹介の「シュール ラ メール」へ。2000年、ソムリエ呼称資格認定試験合格、2007年シニアソムリエ呼称資格認定試験合格。「『シュール ラ メール』では親しみやすく、お客様を和ませる接客を心がけていますので、緊張せず料理とワインを楽しんでください」
今回、講師役をお願いしたのが東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート内にあるフレンチレストラン「シュール ラ メール」のソムリエ・佐藤健一さん。シニアソムリエの資格を有するだけではなく、レストランサービス技能検定1級にも合格している佐藤さんに教えていただいたとおりにすれば間違いなし! である。
今回は「シュール ラ メール」で実際に提供しているフルコースをいただきながら、気になるポイントを質問していく。
「メニューセゾン」(1万円・メニューは2カ月ごとに変更。取材時は10月~11月の内容)
パイ生地をかぶせたスープや骨付き肉など、マナー的には難易度の高そうなメニューが……。
コース内容: 「食前のお愉しみ」「活オマール海老のテリーヌと信州サーモンのマスカルポーネ包み」「スッポンのコンソメ 松茸入り パイ包み」「近海ヒメジのポワレ 栗のバターソース カダイフ添え」「お口直しのソルベ」「仔羊のロースト ハーブを散りばめたパン粉焼き 赤ピーマンソース」「スペシャルデザート」「香り高いヨーロピアンコーヒー」
フレンチレストラン「シュール ラ メール」
ホテル最上階の12階にあり、窓側の席からは海が望める。ディナー営業のみ。舞浜エリアのホテルでフレンチレストランを持つのは同ホテルだけなのだとか
コートを着たままの入店ってNGなの!?
さて。実は取材を始めた途端、いきなり佐藤さんから衝撃的なことを伝えられた。「レストランに入るときは、厳密に言うとコート類は脱いでからが望ましいです」。筆者は10年以上にわたってレストラン取材をしてきたので、ちょいとマナーには自信があったのだが、取材時以外は店に入ってから脱ぐことがほとんどだった。ショック……。理由を聞くと、「レストランを"家"と考えると分かりやすいです。他所のお宅にお邪魔するときはコートを脱いでから入りますよね。それと同じです。ただ、これは"厳密には"というお話なので、あまり気にしなくてよいかと思います」。
いよいよ、カトラリーやグラスがピシッとセットされたテーブルで席につく。ここで筆者が長年気になっていた「ナプキンを膝にかけるタイミング」を聞いてみた。「ワインや料理のオーダー後ですね」と佐藤さん。筆者は、「あまり早く膝にかけると、ものすごくおなかがすいていて、『早く食べたいよぅ~』といっているみたいで恥ずかしいのでは? 」と考えていた。しかし佐藤さんによると、ナプキンを膝に置くことで"食事の準備ができました"というサインになるのだとか。なので、このタイミングでよいとのこと。
店によっては、サービスプレート(化粧皿とも呼ぶ料理皿の下に置いてある皿)の上にナプキンが立っている場合もあるが、この場合は開いたメニューブックをあたってしまうので、メニューブックを開く前に膝にかけてしまってもOKだ。ただし、披露宴の場合は席についてから食事が始まるまでの時間が長いため、乾杯してから膝にかけるのが望ましい。
「まずはビール」ってOK?
次はドリンク。多くの店では食前酒をどうするかと聞いてくるが、果たしてビールは頼んでいいのだろうか。「超高級店になるとシャンパーニュなどを頼まれるお客様が多くなり、ビールのオーダーはほとんどありません。ですが、オンリストされていれば、頼んでも大丈夫ですよ」。なるほど、メニューにあれば「まずはビール」も許されるわけなのだ。
そして、フランス料理店で最初の大きな難関といえばワインのオーダーではないだろうか。分厚い辞書のようなワインリストを渡され、途方にくれた人も多いだろう。開いてみたところで、英語やフランス語表記のみの場合も多く、詳しくない者にとっては「シーン」といった状態。佐藤さん! こんなときはどうすればいいのでしょうか!?
「詳しくない方は、まずはソムリエにいくつか"好みの要素"を伝えてみましょう。最初に赤ワインか白ワインかを言い、赤の場合は味の好みとして重厚感のあるものか軽めのものかを。白の場合は、甘めなのか辛口なのかを伝えましょう。好みの産地やブドウ品種があるならば、これらも伝えることで好みのワインにたどり着く確率がより高くなります」。
最も気になるのになかなか聞けないお値段についてだが、「希望の価格帯も正直に伝えた方がいいですね」と佐藤さん。価格不明で提供されたワインを「一体いくらするんだろう……」と気にしながら飲むより、ずっとこのほうが気持ちいい。
テイスティングの際には、コルク臭などがしないかを確かめる |
ワインを1本オーダーすると、テイスティングを促される。これは、開けたワインが「自分の好みか」を確かめるのではなく、カビの臭いなどコルク臭がしないかどうかを確かめる作業だ。ソムリエがいる店の場合は大抵大丈夫なので、「テイスティングは結構です」と省略してもよい。
ワインが注がれたら「乾杯! 」といきたい気持ちは良く分かるが、ワイングラスで音を立てての乾杯はNG。ワイングラスはとても繊細なので、少しの衝撃でも割れてしまうことがある。グラスの脚を持って少し持ち上げるくらいがちょうどよい。