「通信事業者は"土管屋"と揶揄され、自分たちでダウンパイプに徹すると卑下している」(同)が、これを「周辺サービスを含めて提供するスマートパイプになりたい」(同)というのが目標だ。
その中で「3つのもっと」(同)をスローガンに事業を展開していく計画を示す。「もっと身近に」「もっとグローバルへ」「もっといろんな価値を」という3つの「もっと」で、「確実にやりきる。今後10年、とことんやっていくというビジョンの核にしたい」(同)という。
具体的には、「真のFMBC(通信と放送の融合)の実現」を目指す方向性としてあげる。FMBCに関しては、固定と携帯、CATVを持つKDDIが以前から実現を目指していたが、これまではそれが十分ではなく、「マルチデバイス、マルチネットワークをベースに、新たなビジネスモデルを作っていきたい」(同)考えだ。
グローバル展開では、日本企業が海外に進出する際の「必要なものをすべて提供する完全サポート」を標榜していたが、これをさらに徹底して提供する。さらに、海外のコンシューマ向けサービスも拡大していく計画だ。まずは最初の試みとして、バングラデシュのISPに出資をする。同国では人口の割にインターネット利用率が「2%弱」(同)であり、今後の拡大が見込まれているからだ。同様に、今後の伸びが期待できるアジアを中心とした海外に投資を進めていく。
海外市場に対しては、従来のデータセンター事業が中心になることは変わりないが、コンシューマ向けサービスの強化でさらに事業を拡大していく意向で、基本的には「M&Aがベースになる」(同)見込みだ。これまで、同社では海外での売り上げを2,000億円にまで拡大することを目指していたが、田中社長はこの数字の達成には自信を示しており、コンシューマ向けサービスの展開で、さらなる上積みを狙う。
日本の携帯キャリアは垂直統合型のサービス展開でコンテンツ配信も行っており、こうしたノウハウをベースに、「日本特有のクールな文化を、それが認められているアジアを中心に海外に配信したい」(同)考えで、コンテンツ事業も強化していく方針。
足元の国内でのサービスの強化も図る考えだ。音楽配信のLISMO!などのエンターテインメント系、au Smart Sportsといったスポーツ系、じぶん銀行での金融系といったこれまでのサービスに加え、新たな分野として医療や教育、エネルギー、環境、自動車といった分野に対しても手を広げていく計画を示している。
携帯事業でも、スマートフォン導入に「ちょっと時間をかけすぎた」と反省の弁を述べるものの、「反転のきっかけにしたい」というIS03を11月26日に発売し、今後3機種を順次発売。来年上半期に発表する機種の半数以上でスマートフォンを用意し、巻き返しを図りたい考えで、「元気なau、ワクワク感のあるauを取り戻す」のが狙いだ。
こうした戦略を実現するために、まず田中社長は、「チャレンジ精神、熱意、一体感をベースに社員改革、社内改革を進めていきたい」と意気込み、停滞気味の状況を打破したい考えだ。