KDDIの田中孝司代表取締役執行役員専務が12月1日、代表取締役社長に昇格し、最初の記者会見を開催した。田中新社長は最近のKDDIについて、「スマートフォンに対するチャレンジ精神が失われていた。変化に気づくのが遅かった」と反省の弁を述べ、今後「新たな変化に対応できる会社にしたい。そのためにはまず社内改革が必要」と決意を表明、「新しいKDDIを作る」考えだ。

新社長に就任した田中孝司氏

KDDIは2000年に当時の通信3社が合併して誕生し、その後は小野寺正社長(現・会長)が率いて事業を展開。「国内で唯一、固定からモバイルまでを提供する事業者」(田中社長)として成長してきた。ただ、田中社長はそれに対して、「複数サービス利用での横断的な割引サービスといったレベルにとどまっていた」と指摘。総合的な通信企業としてとしては不十分だという認識を示す。

特に最近では携帯電話のauが低調で、田中社長自身「変化に気づくのが遅かった」と指摘する。auは、3Gサービス開始以降にパケット定額制や着うたフルのような音楽配信、GPS系の位置情報サービスといった先進的なサービスを次々提供して他社に先行していった。これによって成長してきたauだが、「ここ数年は他社にキャッチアップされてきた」(同)。

さらに、これまで何度も田中社長がコメントしてきたのがスマートフォン事業の遅れだ。スマートフォンに対してはチャレンジ精神が失われており、「最初の波に乗れなかったと反省している」と田中社長。

民間調査会社による顧客満足度調査で1位を獲得してきたが、今年はこれもNTTドコモに明け渡している。この点に関しても、「2007年度ぐらいまでで慢心してしまっていたかと反省している」(同)という。

これまで陣頭指揮を執ってきた小野寺会長は、これまでが3社の合併を軌道に乗せる10年だったという見方を示しており、田中社長は、こうした反省を土台に、これからの10年の方針を説明する。

田中社長は、「目指す先」として地域に密着したローカルのサービスから、グローバルに展開するサービスまでを視野に入れる。KDDIグループのCATV会社は地域に密着したサービスを展開しており、「電球を変えるところまでサービスしている」(同)そうだ。こうした地域密着のサービスを全社的に強化するとともに、これまで国内中心だったサービスをグローバルに展開していくという両面での戦略を練る。