親が知らない、「ゲーム機は設定しなくてもネット利用可能」という事実
――PCや携帯電話だけでなく、ゲーム機がネットにつながることに対して、無頓着な保護者も多いようですね。
日名子 : ゲーム機がネットにつながって遊べることは知っている保護者は多いのですが、ただそれは、自分で設定してから初めてネットにつながるものだと思っている人が多いです。ところが今のゲーム機は、設定などしなくても、箱を開けて取り出したらすぐにネットにつながるんです。この事を知らない親が多いのです。「うちは設定していないから大丈夫です」とおっしゃる保護者がほとんどです。
携帯ゲーム機はいわゆるLANケーブルに差すものではないので、環境にもよるんですけれども、買ったその日から無線LANを使ってネットをすることができるのです。
――なぜそのことを親が知らないのでしょうか?
日名子 : ゲーム機は子供が遊ぶものという感覚があるので、ゲーム機で何ができるかを親が知ろうとしないことが理由です。ですが、子供にとってゲーム機で何ができるかを周囲の子供に聞けば、次から次に情報が入ってくるのが現状です。子供同士のネットワークで、親が知らないまま、子供だけがツールとして使いこなすようになるのです。また子供は、ゲーム機で何ができるかを、親に対して積極的に話すことはしません。その結果、親と子供のギャップはすごいものがあります。
携帯電話は、使い方という点で、携帯用サイトという限界がありますが、ゲーム機はPCと同じように自由にネットを見ることができます。
――ゲーム機を使って子供が犯罪に巻き込まれたケースなどはあるのでしょうか?
日名子 : ゲーム機経由でと特定して報じられることはあまりないですが、ゲーム機はPCと同じなので、PCのネットで起こることは、ゲーム機でも起こりえます。事件が起こる可能性も、PCと同様のことが起こると考えていただいて結構です。フィルタリングサービスをPCにも携帯にもかけていて、「じゃあゲーム機にもかけていますか」と言ったら、「えっ?」と気づく親も多いです。ゲーム機のネット接続に対する認知度は、その程度と思っていただければと思います。
岩田 : こういう話をすると、保護者の方々で、少し極端な反応を示す場合があります。(1)そんなに怖いことが起きるなら、ネットへの接続をやめさせたい、(2)社会勉強のうちだから、子供の自由にさせる、という二つのパターンです。こうした反応を示されるのが、我々が一番恐れているところです。(1)の使わせないというのは、これからの子供の生活において、インターネットに全く触れずにすごすことは困難です。勉強に使えば素晴らしい効果があります。(2)は任せていると言えば聞こえはいいですが、一種の放任で、無関心の表れです。
保護者の方に言いたいのは、「子供さんとコミュニケーションをとってほしい」という事です。やっていい事と悪い事について子供とコミュニケーションをとって、子供がどういうコンテンツで遊んでいるのか、きちんと把握してほしいのです。さらに、偶然に有害サイトにアクセスしてしまう検索事故というものも存在するので、有害サイトをブロックするフィルタリングサービスを使うことで、万が一という事態を防ぐことができます。(1)保護者の目と、(2)それをサポートする我々のサービス(フィルタリングサービス)を使っていただく、というのがベストだと思います。
保護者が管理するための「パスワード」を持つことが重要
――ゲーム機に対しては、どういうフィルタリングサービスが有効なのでしょうか?
日名子 : 例えば、「ニンテンドーDSi」では、設定画面からiフィルターを設定することができます。ブラウザの機能として、フィルタリングを設定できるのですが、小学生より強いレベルのフィルタリングをかけることができます。ゲーム機は、子供に渡しちゃったら最後なんですよ。渡しちゃったら子供が独占してしまうおもちゃなので、買った時が、フィルタリングを設定する上で勝負なんです。一旦子供に渡してしまうと、返してくれません。こっそり回収しても、高学年の子供なんかだと、自分でパスワードを設定してしまっていて、保護者が後からフィルタリングをかけようとしても、何もできないケースもあります。従いまして、買った時に、保護者が管理するためのパスワードを、絶対持ってくださいと言っています。
ゲーム機のフィルタリングは、「コミュニケーション」「アダルト」「ショッピング」「Webメール」などに対して、フィルタリングをかける強めの設定のため、子供に不満はあるかもしれませんが、コミュニケーションなどに関しては、PCでやれば済むことです。
――ゲーム機を購入するクリスマスシーズンなどに合わせた啓発活動などは行っていますか?
日名子 : 夏休みや冬休みなど、長期休暇に入る前は、重点的に啓発活動を行っています。
――警察も、ゲーム機によるネット接続に注目していると聞きましたが?
日名子 : 警視庁の方も、「これからはゲーム機(に注意すべき)ですね」と言っていました。警視庁では早い段階からゲーム機に注目していまして、警視庁が保護者向けのイベントを行うときなどは、出展させていただいたりしています。
――これまでの啓発活動に加えて、今後どのような活動を展開していく予定ですか?
日名子 : 小学生に加えて、幼稚園児や保育園児など、未就学児へのアプローチを始めています。デジタルアーツとしても、上から目線ではなく、保護者と同じ立場に立って話をしていかないとと思っています。また、ゲーム機にフィルタリングを導入する方法をドラマ形式で見てもらえる『プロモーション動画』を作りましたので、ぜひ利用していただければと思います。
――日名子さん、岩田さん、ありがとうございました。