『LOST ファイナル・シーズン』

2010年2月。全米で『LOST ファイナル・シーズン』の放送が開始した。あの老舗一般紙『USA Today』の一面で特集が組まれるなど、全米メディアは『LOST』の最後にこぞって大盛り上がり。視聴者も飛びつき、18歳~49歳における全米視聴率ランキング・TVドラマ部門では堂々の1位を獲得! それは『LOST』が間違いなくTVドラマ史上に残る大傑作であることを、改めて世に知らしめた出来事だった――。これまでゴールデン・グローブ賞やエミー賞など、権威ある賞レースでのべ228部門ノミネート、52部門受賞するという快挙も果たした『LOST』シリーズ。この作品がこれほどまでに他を圧倒した魅力とは何だったのか。それは一言で言えば"バラバラのパズルが一気に完成するような衝撃と感動"だ。まずは『LOST』を取り巻く今までの流れを振り返ってみよう。

一体、何が起こっているのか?……『LOST』の幕開けは文句ナシにすごかった!

無人島に取り残された生存者たちのサバイバル・ドラマだったはずが……

全米でシーズン1がスタートしたのは2004年、その翌年には日本でも放送。いきなり無人島に墜落した飛行機、救助も来ないまま取り残される48人の生存者、正体不明の怪しげな音に、生存者を追いかけてくる何か――第1話で展開されたこれらのシチュエーションは、視聴者の心をガッチリ掴む、絶妙すぎるプロローグだった。うわっ、なんかスゴいサバイバル・ドラマが始まった! 次はどうなる!? 彼らは生きて帰れるの!? 誰しもその後の展開が気になってウズウズしたはずだ。ところが……『LOST』は過去のTVドラマとは違って、そんな視聴者の予想の範囲を遥かに超える、とんでもない作品だった!

唐突かつ断片的なフラッシュバックの連続! 衝撃の『LOST』演出

視聴者をいちばん驚かせたのが、唐突に挟み込まれる各登場人物の過去にまつわるフラッシュバック。それも1エピソードのうちに何度も何度も挿入される。しかも、断片的。思わず「え~っ、それだけ!?」と叫んでしまいたくなるほど、一度のフラッシュバックだけでは全体像が何ひとつ見えてこない。完全におあずけを食らった状態で、観ているこちらのフラストレーション指数は一気に上昇。さらに、「やっと次のフラッシュバックが来た~!」と思ったら、前回の続きじゃなかったりして、またムズムズ。まるで巨大なパズルのピースをひとつずつ手渡されているような感覚……。しかも、回を重ねるごとに登場人物のそれぞれの過去が少しずつ分かってきて共感しても、まだまだ全体像が見えてこないから、とにかく観続ける。こうして、私たちはまんまと斬新かつ衝撃的な『LOST』演出の罠に引っかかっていったのだ。