ペットボトル使用には断固反対

ユーロ安によってずいぶんと購入しやすい価格になった。このテイスティングが終わって家路につく道すがら、スーパーやコンビニにのボジョレー・ヌーヴォーに目を向けると、1,980円の値札を一番多く見かけた気がする。空輸便で届けられたヌーヴォーが2,000円でお釣りがくるなんて、少し前なら考えられなかったことだ。そしてこれらはガラス瓶に入ったボジョレー・ヌーヴォーのことで、ペットボトルに入ったそれは、我が目を疑うような信じられない安値で売りに出されている。

これに関しては昨年あたりから波紋が広がっている。昨年の記者会見の席でも、ボジョレーワイン委員会としては断固反対の姿勢をとっていた。チープなイメージを与えること、そしてワインの保存には向かないことがその理由である。

実際今年7月には政府に政令の改定を申請しているのだが、現在A.O.C(原産地統制名称)自体の大幅な見直しを行っている最中で、この改定案が盛り込まれるかどうかが判明するのは2011年中とのこと。たとえ承認されても、来年のボジョレー・ヌーヴォー解禁に間に合うかどうかはまだわからない。

個人的にはこの際チープなイメージはどうでもよく、二酸化炭素削減、輸送費削減はとてもいいことだと思う。そう、いいことだとは思うが、フルボトルが500円台で買えちゃうんですよ。ブドウを収穫する人がいて、ワインを仕込む人がいて、瓶に詰める作業もあって、その上飛行機で運ばれてくるものが500円台って。やはり頭の中の「?」マークはぬぐえない。

誰が言ったか「ボジョレーの帝王」ことジョルジュ・デュブッフ氏も来場。彼のボジョレー・ヌーヴォーは赤だけではなくロゼもあり、さらにはマコネー地区の白のヌーヴォーも日本では販売されている

「桁外れにすばらしい」昨年のヌーヴォーを1年寝かせてみた

話は変わって、2009年のボジョレー・ヌーヴォー。「良年のヌーヴォーは半年でも1年でももつ」と昨年の記者会見でビュリア氏は発言した。ならば! 寝かせましたよ、仰せの通りに1年間。果たして、その味はいかに!?

「ジョルジュ・デュブッフ ボジョレー・ヌーヴォー2009」(ハーフボトル)

昨年、色はヌーヴォーにあるまじきとても濃いルビー色をしていた。1年経ってもまったく褪せていない。バナナのような甘い香りと胡椒のスパイシーな香りがする。深い甘さを最初に感じるが、チャーミングな酸味が芯にあってずいぶん長く続く。タンニンもアルコール感も強く、パワフルでボリューミーさは健在であった。

結果、正直熟成は進んでいない。むしろ昨年よりパワフルになったような気さえする。あと3年はいけるかもというのは個人的な印象だが、いずれにせよビュリア氏の発言は本当だった。

最後に、今やどのコンビニでも気軽に買えるようになったボジョレー・ヌーヴォー。気軽なワインゆえにおつまみもコンビニで調達するならやっぱり肉系。冷たいロースハムと乾いた常温のビーフジャーキーを買ってみよう。冷やして売られているヌーヴォーはほぼないので、最初は常温で冷たいロースハムと、その間冷蔵庫で残りのヌーヴォーを冷やし、10℃くらいまで下がったところで今度はビーフジャーキーを合わせてみると……これがなかなかイケる。温度差のマリアージュ、一度お試しあれ。