キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、IT管理者のいない中小企業向けに、IT支援のクラウドサービス『HOME』を2009年12月から提供している。そして、今年の10月には、HOMEが持つポータル機能を強化、サービスの拡大を図っている。
HOMEは大きく「HOME-UNIT」というセキュリティサービスと、「HOME-PORTAL」というポータル機能に大別でき、基本サービスは月額12,000円という月額課金方式で提供される(サービス開始にあたり別途6万円(税別)が必要)。これにより、サーバ等の機器やソフトウェアを購入することなく、初期投資を抑えながらサービスを利用できる。なお、基本サービスには5IDまでのライセンスとコンタクトセンターへの問い合わせサービスも含まれる。
HOMEがターゲットにしているのは、中小企業の中でも、従業員数が30名までの小さな企業だ。これは、同社の複合機がもっとも普及している企業規模でもある。
キヤノンマーケティングジャパン BSマーケティング統括本部 ドキュメントソリューション企画部 HOME・インターネット企画課 課長の沢田泰一氏は、「SaaSというのは、中小企業にメリットがあるサービスですが、思うように浸透していません。その大きな要因は、SaaSがよくわからない、カスマイズができないといったものです。わが社の強みは、複合機の営業担当が訪問販売を行っていることです。一般的なSaaSのサービスはネットで申し込むケースが多いのですが、弊社ではお客様を訪問することによって、お客様の課題を聞いて、解決策としてHOMEを提供することができます。これが、他のSaaSベンダーとの違いです」と語る。すなわち、同社の得意とする中小企業のユーザーに向け、新たな収益源としてクラウドサービスを提供しようというものだ。
セキュリティサービスでは、各企業のルータ直下にゲートウェイ端末として「HOME-UNIT」を設置。ファイアウォール、アンチウィルス、アンチスパム、Webフィルタリング、不正侵入検知・防御の各機能が提供される。
ウィルス定義ファイルは自動で更新され、また、Webフィルタリングやスパムメールなどのブラックリストもリアルタイムで更新される。状況は同社のデータセンター側で常に監視されており、万が一ウィルスの侵入を検知した場合は、ユーザーにメールで通知される。IT管理者を設置できない企業に代わって、センター側でセキュリティ管理機能をワンストップで提供するのだ。
セキュリティサービスの提供を開始した背景を、キヤノンマーケティングジャパン BSマーケティング統括本部 ドキュメントソリューション企画部 HOME・インターネット企画課 主任の村上啓之氏は、「複合機を利用されているお客様のなかに、ウィルス対策ができおらず、感染源となり、お得意様にご迷惑をおかけしたとがありました。また、セキュリティ対策はできているとおっしゃるお客様でも、実際は単にウィルス対策ソフトを導入されただけいうこともよくあります」と、中小企業のセキュリティ基盤の弱さを指摘する。
一方、「HOME-PORTAL」では、スケジュール、設備/備品予約、伝言メモ、掲示版、ファイル共有などの機能が提供される。沢田氏は、「複合機を提供されている他の企業でもセキュリティサービスは提供されていますが、ポータル機能を提供しているのは、弊社だけです」と同社の強みを説明する。中小の中には、ホワイトボードで情報を管理している企業も多く、「HOME-PORTAL」ではそういった企業に情報共有のためのグループウェア機能を提供する。あまり機能を詰め込みすぎると、かえってシステムが難しくなるため、機能は必要最低限に絞っているという。