3次元モデルと3次元表示が標準

仮屋氏は続いて、Triforce(トライフォース)の具体的な特徴を3枚のスライドに分けて説明した。最初のスライドでは「ユーザー・インタフェースの改良」、「パフォーマンスの向上」、「3次元(3D)表示と2次元(2D)表示の円滑な切り換え」、「最先端実装技術への対応」、といった特徴を備えることが示された。

Triforce(トライフォース)と従来の基板CADとの大きな違いは、基板の面方向の配置配線だけでなく、基板に垂直な方向の配置配線を扱えるようにしたことにある。すなわち3次元の取り扱いを容易にした。このために、3次元(3D)表示を標準としている。

Triforce(トライフォース)では多層基板の層構造を立体的に詳しく表示するとともに、ユーザーが層構造のパラメータを変更できる。例えば従来の基板CADでは、設計作業に取りかかる前に配線層数や内層厚みなどを設定する必要があり、これらの設定は設計作業の途中では変更が難しかった。しかしTriforce(トライフォース)では設計作業の途中で層数や内層厚みなどのパラメーターを変更可能にした。

Triforce(トライフォース)の特徴一覧(設計CADとしての特徴)。「ユーザー・インタフェースの改良」、「パフォーマンスの向上」、「3次元(3D)表示と2次元(2D)表示の円滑な切り換え」、「最先端実装技術への対応」、といった特徴を備える

さらに入力デバイスとしてタッチパッドを導入し、ズームインやズームアウト、視点移動などの操作をタッチパッドを通じて実行できるようにした。タッチパッドの操作はマウスの操作と独立に実行できるので、マウスの操作を妨げない。例えば右手でマウスを操作しながら、左手でタッチパッドを操作できる。このため作業効率が高まる。

ユーザー・インタフェース改良の詳細。タッチパッド技術の開発ではペンタブレットの大手メーカーであるワコムの協力を得た

それから最新の64ビット版Windows7搭載パソコンを活用することで、パフォーマンスを大幅に高めた。Triforce(トライフォース)の推奨ハードウエア環境は、OSが64ビット版Windows7、CPUがクアッドコアでクロック周波数3GHz以上、主記憶(メモリ)が4.0GB以上(設計対象がシングルボードの場合)または8.0GB以上(設計対象がマルチボードの場合)、グラフィックスが1.0GBのメモリとOpenGL/DirectXサポート、モニタが大きさ19型以上で解像度が1680×1050画素~1920×1200画素である。タッチパッドはTriforce(トライフォース)製品版に標準添付される。

Triforce(トライフォース)の推奨ハードウェア環境

これらの推奨ハードウェア環境を実現するコストは、オンライン直販を利用することで11万5,000円~15万5,000円程度で済む。業務用のハードウェア環境としては、決して高額とはいえない。設計者1名にハードウェア1台を用意できるコストといえよう。

パフォーマンス向上の例。回路基板の特定のネットに対して部品移動/線分移動、面修正経路変更、再配線を実施する一連のフローで比較。来の基板CADに比べてマウスの操作回数と移動距離が大幅に削減されている

モデルのデータは3次元(3D)データで構築した。3次元(3D)データを基本にしているので、表示モードを3次元(3D)表示から2次元(2D)表示へと即座に円滑に切り換えられる。

データを3次元(3D)で持たせたのは、最先端の実装技術に対応するためでもある。繰り返しになるが、最新の実装技術は基板の面方向ではなく、厚み方向に密度を高めている。例えばプリント基板の内部に部品を実装したり、基板に内蔵した部品の両面から配線を引き出したり、半導体パッケージを重ねて実装したりする。このため、3次元(3D)表示が必須だ。

また半導体パッケージそのものの3次元積層技術にも対応した。大きなシリコンチップの上に複数の小さなシリコンチップを並べたり、シリコンチップを貫通する電極(TSV)を通じて数多くのシリコンチップを積層したりする技術である。