国立国会図書館の電子図書館サービス

第2部では、「広がるデジタルアーカイブの世界」と題し、同館で提供している具体的なデジタルアーカイブ・サービスを紹介。「近代デジタルライブラリー」や、「インターネット資料収集保存事業」、デジタルアーカイブポータル「PORT」、データベースナビゲーションサービス「Dnavi」の4つのサービスを説明した。

近代デジタルライブラリー」は、同館所蔵の明治期・大正期・昭和前期刊行図書をデジタル化し収録した電子図書館。著作権保護期間が満了したものや著作権者の許諾を得た資料や図書など計約17万冊を、インターネット上で公開している。なお、内訳は、明治期約13万冊(所蔵数の約8割)、大正期約4万冊(所蔵数の約4割)。これらは、利用者個人のパソコンでPDF保存や印刷も行える。1ページ毎にURLがあり、「ウェブサイトやブログなどで引用していただくこともできます」(同館 関西館 電子図書館課・澤井絵美氏)。館内端末からのみ閲覧可能なものも、明治期約3万冊、大正期約5万冊、昭和前期約14万冊の計約22万冊ある。

近代デジタルライブラリー

近代デジタルライブラリーには、明治41年に出版された『フランダースの犬』日本初の翻訳書も収録。「ネロとパトラッシュの名前が日本名になっている等、興味深い発見をすることができます」(澤井氏)。

また、同館では、インターネット上のウェブサイトをデジタル化資料として保存する「インターネット資料収集保存事業」も進められている。これは、内容変更やサイト閉鎖などによって閲覧できなくなる可能性のあるインターネット情報を、紙の資料と同じように収集・保存していくという取り組み。主に、公的機関や大学、電子雑誌、イベントのウェブサイト等を保存している。「たとえば、今は閉鎖されて見れない、2002年FIFAワールドカップのサイトや、今は合併して木津川市となった京都府加茂町のウェブサイト等が、インターネット資料として保存されています」(澤井氏)。なお、収集するの際の著作権許諾は、「当初は全て個別に許諾を取っていました」とのこと。2010年4月に規定が改訂され、「現在は、公的機関のウェブサイトに関しては、当館は著作権者の許諾なく収集できるようになりました。それ以外のサイトについては、現在も個別に許諾を文書で依頼しています」(澤井氏)。収集されたサイトの検索・閲覧は、同事業のサイトから行える。なお、インターネット公開の許諾が得られていないサイトについては、館内端末からのみ閲覧可能。

「インターネット資料収集保存事業」

「インターネット資料」の検索例。ここでは、京都府加茂町(現・木津川市)のウェブサイトを検索

様々な機関のデジタルアーカイブを横断検索できるサービスも

同館および、そのほか様々な機関のデジタルアーカイブの蔵書情報を調べることができるサービスもある。「PORTA」は、公的機関や大学、大学図書館(機関リポジトリなど)、公共図書館、民間機関(青空文庫/ 新書マップほか)、国立国会図書館(近代デジタルライブラリーなど)など、各機関が公開しているデジタルアーカイブを横断検索できるサービス。2010年9月時点で、57機関173アーカイブ上の情報約2,800万件が検索可能となっている。また、「Dnavi」は、日本国内で作成されインターネット上で無料公開されているリンク集(データベース)が検索できるサービス。たとえば「妖怪」で検索すると、妖怪に関する様々なリンク集を調べることができる。

「PORTA」

PORTAで「平安京」に関する資料を検索。国立歴史民族博物館など、図書館以外の機関のデータベースも検索対象

「Dnavi」

Dnaviを使って「妖怪」で検索をかけた結果