『国立国会図書館データベースフォーラム』が10月22日、国立国会図書館東京本館にて開催された。フォーラムでは、同館で行っているデジタル化事業や、利用できる様々なデジタルコンテンツを紹介。同館の職員らが、デモンストレーションを交えながら説明した。また、国立情報学研究所名誉教授・情報知識学会会長の根岸正光氏による特別講演もあり、同館のサービスへの期待などが語られた。

国立国会図書館の資料デジタル化の現状

今回実施されたフォーラムのプログラムは、全部で4部(国立国会図書館における資料デジタル化の推進/ 広がるデジタルアーカイブの世界/ 国会情報や法律を探す・調べる/ 調べもののベストパートナー)。第1部の「国立国会図書館における資料デジタル化の推進」では、国会図書館が進めている資料デジタル化事業の現状が紹介された。

国会図書館の資料デジタル化対象資料

同館では現在、原本の「保存」と「電子図書館サービスの提供」を目的として、所蔵資料の大規模デジタル化を実施している。デジタル化の対象となる図書は、戦前期刊行図書、戦後期刊行図書(1968年受入分まで)、国内刊行雑誌(2000年受入分まで)、古典籍資料、博士論文、官報(1883年~1952年受入分まで)など。商業的にデジタル形式で配信・頒布されている、もしくは将来的にその予定がある雑誌については、出版社等の商業活動とのバランスを図るため、デジタル化対象外となる。平成21年度補正予算で、デジタル化のために128億円の予算が計上されており、「このデジタル化で、国内図書の約1/5となる約89万冊のデジタル化が終了する見込みです」(国立国会図書館 総務部企画課電子情報企画室長 遊佐啓之氏)。

デジタル化資料のうち、電子図書館サービスで提供されるのは、著作権の切れたもの、および著作権者の許諾があるもの。このサービスでは、インターネット上で資料を公開しており、館外からでも閲覧できる。現在、「戦前期資料をインターネット公開するため、著作者洗い出し、没年調査、連絡先調査、外部機関照会、許諾処理といった著作権処理も進めています」(遊佐氏)という。一方、原本を保存するためにデジタル化された資料については、デジタルデータを館内端末からの閲覧に限定して公開する。同じ資料を同時に閲覧できる人数は同館に所蔵している冊数分に限られる。

デジタル化資料の利用提供

なお、同館のデジタル化資料は、現状では画像ファイル形式で作成・公開されている。今後、視覚障がい者へのテキスト読みあげサービスや、資料の全文検索サービスの将来的な提供を目的として、資料の全文テキスト化・検索実証実験も実施していく。「出版各社から、デジタル出版データのご提供などの協力を仰ぎ、技術的課題の検証等を行っていきます」(遊佐氏)とした。

一方、同館の電子図書館サービスの拡充を進めていくことに対し、出版業界からは、著作権者および出版関係者の経済利益や出版ビジネスに対する影響を懸念する意見も挙がっている。同館では、著作権者や出版関係者の経済利益やビジネスへの配慮が必要との認識の下、2008年9月より、「資料デジタル化及び利用に係る関係者協議会」を設置。デジタル出版物についての図書館サービスと民間ビジネスの境界範囲や利用ルールを明確化するために、権利者、出版関係者等との協議を行っている。今後、協議会を通して、「図書館間で(デジタル化資料の)資料相互貸借できるような方策や、テキスト形式データの作成、有償配信による、遠隔地(館外)からの利用モデルなどを探っていきたい」(遊佐氏)としている。

デジタル化の基本方針と館内提供の基本方針と館内提供の基本要件についての第一次合意(2009年3月)