ワークとライフは人生の両輪

――小室さんはなぜワーク・ライフバランスを提唱されているのでしょうか?

仕事であれプライベートであれ、自分の人生を充実させて日々ステップアップしていきたいという願いは、多くの人に共通することだと思います。

ところが現在のビジネスパーソンを取り巻く環境は、以前に比べて様変わりしました。かつては社員の育成に時間をかけ、社内でいろいろな勉強をさせた企業も多かったのですが、今はそうした余裕も失われてしまいました。そのため社員は早い段階から結果を求められ、不況による人員削減等によって仕事量も増えています。

そんな状況のもと、日々の生活をひたすら「ワーク」で埋めてしまうと、自分のステップアップにつながる時間がとれなくなってしまいます。ここで言う「自分のステップアップにつながる時間」とは、資格取得のための勉強や交流会だけでなく、家族とのふれあいや趣味に没頭する時間も含まれます。

もし自分が理想とする人生に近づきたいと思うなら、大事なのは業務時間が終了したあと。言いかえれば、18時以降を「ライフ」のために使うと決め、工夫することです。 ワーク・ライフバランスは仕事とプライベートを両立させ、お互いに相乗効果をもたらすための考え方なのです。

――ワーク・ライフバランスを実践するうえで大切なことは何ですか?

年や月といった大きな単位で考えるのではなく、1日1日を大切にすることです。特にライフの重要な要素である家庭を充実させるには必須の考え方だと思います。

ワークの比重が高いと、つい「家庭のことはあとでなんとかすればいいや」と思ってしまいますが、家庭に「あとで」は通用しません。たった2~3日空けただけでも自分の居場所がなくなってしまいます。そうなる前に意識を変え、日々の中で家族とのきずなを深めていくことが大事なのです。

――そこで小室さんプロデュースのワークライフ・バランス手帳(2011年版は10/16発売予定)が役に立つわけですが、この手帳にはどんな特徴があるのでしょうか

テンミニッツという付せんとコラボレーションし、ウィークリーページの8時~18時の幅をテンミニッツとそろえ、気持ちよく使えるようにしました。

テンミニッツのサイズは、大中小の3種類。大が120分、中が60分、小が30分を表しています。To Doを書き出すと同時に時間を見積もることができ、とても便利です。付せんが収められたケースも手帳カバーの折り返し部分に差し込めるようになっています。

付せんでTo Doを可視化

――なぜ手帳と付せんを一緒に使うことをすすめるのでしょうか

ビジネスにおける予定を大別すると、期日が確定しているものと、変動性が高いものに分かれます。特に変動性が高い予定は緊急度が低い作業である場合も多く、うっかりするとどんどん後回しになってしまいます。ところがたいていの人はこれを手帳に明記することもなく、その作業にかかる時間も把握していません。そのため目に見えない仕事が山積みとなり、スケジュールが破綻してしまうのです。

そこで変動性が高い予定をテンミニッツに書き出し、「見える化」して手帳に貼り付ければ、管理が行き届くうえに前倒しして消化することもできます。

また毎朝テンミニッツに1日のタスクを書き出し、仕事が定時までに終わるよう組み立てれば、私の会社で実施している「朝メール※」と同じことができます。消化したタスクをまとめて貼れば1日の実績がわかりますし、終わらなかったものを翌日に貼り付ければ、未処理のタスクをもらすこともありません。

※株式会社ワーク・ライフバランスでは、毎朝全社員が自分の1日の仕事予定を立て、メールで上司に報告する

ちなみに私は緑の付せんにワーク、黄色の付せんにライフの予定を書くと決めているので、手帳を開けばワークとライフの比重が一目瞭然です。これも付せんならではの利点ではないでしょうか。

ワークが極端に多かったり、ライフのテリトリーにまで緑の付せんがついていたりしたら、代休を入れるなどして調整します。あくまでもワークとライフの分を守り、忙しさに流されないようにするのです。

フィットネスクラブ通いや習い事を継続したいときも、1週間の間に付せんを貼ってスケジュールに組み込み、無事に達成したら次の週に付せんを移動させます。付せんで予定を可視化すれば、怠けがちな自分の心に負けることも防げるのです。

――小室さんが考える手帳のよさとはどんなところでしょうか? また、デジタルツールを使うことはありますか?

ほかの人とプロジェクトを共有するときはグーグルカレンダーを使いますが、それ以外はもっぱら手帳ですね。

手帳のよさは、スケジュールを長いスパンで俯瞰できることだと思います。よく自分のスケジュールがどうなっているかも確認せずに仕事を引き受けてしまう人がいますが、後になってこなしきれずにお客様に迷惑をかけてしまってから、「こんなに仕事が重なっていたんだ!」と気付いても遅いのです。しかしワーク・ライフバランス手帳にあるマンスリーの「プロジェクト管理シート」などであらかじめスケジュールを把握しておけば、同時期に複数のプロジェクトを抱えることを避けたり、先方と期日交渉をして余裕がある月に前倒ししたりすることができます。つまり仕事の主導権が握れるんですね。

自分に与えられた仕事をコントロールして平準化するには、長期的な視点を持つことです。それにはやはり全体が見られる手帳を上手に活用することが大切だと思います。



次回は、「仕事の負担を減らす手帳術」についてうかがいます。

小室淑恵さんの最新手帳、『小室淑恵のワーク・ライフ・バランス手帳2011』10/16発売(予定)!



昨年好評だった『小室淑恵のワーク・ライフバランス手帳』が、さらに進化して発売!
一週間の仕事の段取りができるようになれば、定時に仕事を終えるタイムマネジメント能力が身につきます。イクメンや介護、少子化や子育てについてなど、WLBに関するデータも新たに追加。2011年は「プロボノ」という仕事のスキルを生かしながら、社会貢献を行う、新しい働き方のヒントも掲載しました。ワークで培ったスキルを、ライフの時間に他者へ還元してみましょう。会社でWLBの実現が難しい方でも、個人ならできることあります。「会社も自分もハッピーになる」、そんなwin-winな関係を実現できるワーク・ライフバランス手帳で、充実した毎日をすごしてください。 著者 : 小室淑恵
定価 : 1,575円
INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
2008年に始めた著者インタビューポッドキャスト「人生を変える 一冊」をきっかけに起業。
現在は、企業や教育機関、公共機関などにポッドキャストを中核としたサービスを提供している。インタビュアーとしても精力的に活動、渡邉美樹さん、堀江貴文さん、石田衣良さん、寺島実郎さんらこれまでにインタビューした人物は1,000人を超える。
KIQTAS(キクタス)ホームページ
早川洋平のブログ