「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」(以下、JBC)。今年もこの季節がやってきた。バリスタの全国大会である同選手権で優勝すると世界大会「ワールド バリスタ チャンピオンシップ」(以下、WBC)への出場権が得られる。次回のWBC開催地はコロンビア。WBC出場をかけ、約150名が練習の成果を披露した。
各自の競技時間は15分。エスプレッソ、カプチーノ、シグネチャービバレッジ(エスプレッソを使用した自由テーマのドリンク・ただしアルコールの使用は不可)をつくり、その出来栄えを競う。限られた時間の中で、完成度の高い作品をつくる必要があり、時間との戦いでもある。JBCの詳しい競技ルールについては、こちらの記事を参考にしてほしいが、決勝大会でもタイムオーバーがあったり、エスプレッソの抽出がベストな状態でなかったりとハプニングが起きることもしばしば。見ている側もハラハラドキドキの大会なのだ。
15分間の競技時間内にエスプレッソとカプチーノ、シグネチャービバレッジを4杯ずつつくる(写真は中摩麗バリスタ) |
食器やカトラリーは各バリスタが用意し、自分の世界観を表現する(写真は岡田章宏バリスタのカプチーノ) |
ファイナリストは6名。丸山珈琲、井ノ上珈琲、小川珈琲といったこれまでにも優勝者を輩出したことのある企業が名を連ねていた。大会の詳細レポートに入る前に、先に結果を皆さんにお伝えしておこう。
ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 2010結果発表
順位 | 氏名 | 店舗名 / 企業名 |
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1 | 鈴木樹 | 「丸山珈琲リゾナーレ店」(長野) / 丸山珈琲 |
2 | 中摩麗 | 「ヴォアラ珈琲」(鹿児島) / 井ノ上珈琲 |
3 | 岡田章宏 | 「小川珈琲京都三条店」(京都) / 小川珈琲 |
4 | 大澤直子 | 「小川珈琲イオン大日店」 / 小川珈琲クリエイツ |
5 | 菊池伴武 | 「NOZY COFFEE」(東京) / NOZY珈琲 |
6 | 村田さおり | 「UCCコーヒーアカデミー」(兵庫) / UCCホールディングス |
見事優勝に輝いた鈴木樹バリスタは丸山珈琲勤務。昨年の優勝者である中原見英さんも同社勤務で、近年はファイナリストに複数名を送り出すほどの名門である。JBC'08 - '09の優勝者である岡田バリスタは残念ながら3位に終わり、JBC2008の優勝者・竹元俊一さんのいるヴォアラ珈琲から出場した中摩バリスタは準優勝となった。中摩さん自身も何度もファイナリストとなっている実力派。JBC関係者によると、「1位と2位は僅差」とのことだった。
斬新なプレゼン、意外性のあるシグネチャービバレッジ
さてここからは、決勝戦で印象に残ったシーンを振り返っていこう。まずは鈴木バリスタ。多くのバリスタはエスプレッソ、カプチーノ、シグネチャービバレッジといった順番でドリンクを提供していき、その間に使用しているコーヒー豆や産地の説明を行う。しかし鈴木バリスタは、豆に関する説明を一切しない。審査員に対し、「先入観なしに味わってください」と語りかけた。後に、使用豆をコスタリカのシンリミテスと説明するのだが、シグネチャービバレッジも独特だった。
これまでのJBCやWBCを見ていると、スニフターやエスプーマといった器具を使ったり、様々な食材を組み合わせたりと、シグネチャービバレッジは複雑で奇抜な内容になっていく傾向があった。しかし鈴木バリスタの作品はアイスアメリカーノ。定番にしているカフェも多いくらいのオーソドックスなメニューだ。
提供方法は工夫を凝らしており、氷を入れたグラスにエスプレッソを加え、湯を別添えにしてサーブ。審査員自身がグラスに湯を注ぎ、飲む。途中でアカシアの蜂蜜シロップを加え、味の変化を楽しませる、といった内容だった。「とっても上質なコーヒー豆を使っているので、シンプルに味わってもらいたかった」。そんな思いが審査員に届いての結果だったのだろう。