結婚はもっとリアルであるべきだと細川さんは話す。「その人と家族になりたい、一緒にいたいということが一番大事だと思うんです。小説では僕が思う、したい結婚という方向に向かってほしいなという願望でもありますね」。

主人公は草食系男子(を超えた植物系男子)。草食系というととかくマイナスイメージをもたれやすいが、野生動物にも詳しい細川さんは繁殖力が強いのは草食系だと指摘する。「数字的にはわからないんですが、トラ、ライオン、チーター、ヒョウ……この辺りは肉食動物ですが部分的には保護動物になっているんです。ということは、数が少なくなっているんですね。一方、シマウマやガゼル、インパラといった草食動物は保護動物になっていない。つまり、肉食ほど淘汰されているんではないかなと。そういう意味では繁殖力が高いのは草食系なのでは……という結論に至ったんです」。細川さんの主張なら"草食系男子"こそ"現代社会の勝ち組"ということになろう。

そして、草食男子について細川さんはさらにこう話す。「自分が好きな相手を見つけたら、誰だって一生懸命になると思います。そういう女性がいなければ草を食っているだけで『みんながみんな、温厚だと思うなよ」という話ですよね」。う~ん。草食男子、実はとっても奥が深いです。

その草食系を超えた植物系男子の定義については「何もしない男子を指すんですけど、そういう子たちも周りに多くてモデルになった」のだとか。女性である筆者から見て植物系男子の主人公の生態は「確かにいるいる!」とうなずいてしまうほどリアルに描かれている。

家電トリビアは細川さんの真骨頂。「(家電の話は)お約束で書いた方がいいかなと思って。あと、映画を撮ろうと思ったので量販店のタイアップがほしかったんです(笑)」と謙遜するが、LED電球が彼女と主人公の出会いだなんて、細川さん以外誰が思いつくのだろう!? ライバルとの"家電対決"など随所に家電ネタがちりばめられており、中だるみすることなく一気に読めてしまう爽快さがある。

そして、この小説の特長としてもう一つ挙げるとすれば「結婚してはならないチェックリスト」。結婚を条件でとらえるのではなく、どれだけ相手と向き合っているかが分かる項目ばかりなので、ぜひチェックしてみてほしい。「チェックリストに挙げられているのは、すべてウィークポイントです。でもここで僕が言いたいのは、自己主張できる女の人がこれだけ増えてきていて『そんなのついていけないよ』ではなく、その人たちの良さを理解してあげるべきではないのかなということ。逆にいえば、僕たちの世代は自己主張をしながら生きてきた年代なので、それがどうやって魅力的に映るか、を考えてみたかったんです」。

結婚してはならないチェックリスト

・見栄っ張り
・思ったことをすぐに口にする
・相手の携帯をチェック
・浪費家
・異性の友人が目立つ
・食の好みが合わない
・自己中心的
・同性代表者論
・隊長気取り
・夜の相性が悪い

「いくつかウィークポイントとなりえる項目として、他にもいろいろあったんです。たとえばKYとか。でも、空気読んでどうするんだと。個性がないじゃないですか。空気読むって一般的にはみんなと合わせるってことでしょうけど、それだけでいいわけないじゃないって思って」。

項目の中で、細川さん自身がウィークポイントだなと思う項目は「食の好みが合わない」ということ。「僕は偏食なんで、それにあわせてもらっちゃうと嫌いなものを克服できないし、同じようなものしか食べなくなってしまう。こういう食材と組み合わせて、こういう味付けなら美味しいんじゃない?って言われたらいいなと思います。実際、食の好みなんて合わなくていいと思うんですよ」。

最後に細川さんは「ぜひ、若い人にも読んでもらいたいと思っています。舞台も渋谷、表参道にして、活字は読まない人にも読みやすいように工夫しました。日常生活で、結婚や離婚に関する勉強なんてしないじゃないですか。そういう意味では結婚はどういうものか、そして離婚というリスクもあるんだよということが読みながら学べるようになっています。是非お手にとってご覧ください」と笑顔を見せた。若い人もさることながら、「結婚に焦るばかりでなく、現実にしっかり直面してもなお一緒にいたい異性かどうか」にも気付かされる目からウロコの小説。ぜひご一読あれ!

細川 茂樹(Shigeki Hosokawa)
1971年12月16日 岐阜県生まれ。
1994年、俳優デビュー。多数のドラマ・映画に出演するほか、バラエティ番組・情報番組でも活躍。趣味の車、家電、野生動物、株式、不動産に関しての見識の高さは名高く、その博学ぶりを発揮している。
現在、テレビ『テレビでハングル講座』(NHK教育)、「ハンチョウ3」(TBS 系)、ラジオ「細川茂樹 SBSで行こう」(静岡放送)に出演中|