Intelの50Gbps WDM光伝送

Intelは4つの波長のレーザーを使い、それぞれを変調した信号を1本の光ファイバにまとめて送り、受信側では波長ごとに分けてそれぞれをフォトダイオードで検出するという波長多重方式で50Gbpsの信号伝送を実現している。

Intelのハイブリッドシリコンレーザー

図が小さくて見難いが、 SOIのように酸化膜の上にシリコン層のあるウェハを使い、レーザーを作る部分にはシリコンの島を作り、その上にInPを使ったチップを接合している。光の増幅を行うのはInPの層であるが、光は下のシリコン部分も含めて往復して反射を繰り返してレーザー発振を起こす。反射を起こす鏡に相当するのはシリコンにエッチングで作られたGrating(回折格子)で、ピッチを変えることで発振周波数が調整できる。

InPチップの貼り付けという工程は必要であるが、レーザーからの光が導波路にうまく入るようにするなどの調整は不要で、別チップのレーザーを使うより組み立ての手間が少ないという。

Intelの高速シリコン変調器

Intelの変調器は、レーザーからの光を2つに分け、それぞれを遅延時間が可変できる伝送路を通し、その後、2つの光を合体させるMach-Zehnder型を使っている。レーザーやその他の回路も含まれているので、変調器だけの大きさではないが、それでも送信LSIは長さが2cmと非常に細長いチップとなっている。

IntelのSiGe光検出器

Intelのフォトダイオードはシリコン上にGeをエピタキシャル成長させて作られ、入力導波路の延長がフォトダイオードになっているWaveguide型の構造である。

そして、今回の発表のシステムでは、1291nm、1311nm、1331nm、1351nmと20nmずつ波長の異なる4つのハイブリッドレーザーを使い、それぞれを12.5Gbpsの信号で変調し、4つの波長の光をマルチプレクサで合体させて光ファイバに送り出している。一方、受信側はデマルチプレクサで4つの波長の光を分離してそれぞれの波長の信号を検出するSiGeフォトダイオードに導いている。

Intelの4波長CWDM伝送シリコンフォトニクスシステム

シリコンフォトニクスで12.5Gbpsという変調や受信速度は標準的で、それほど速いとは言えないが、4チャネル分を1つのチップ(送信チップと受信チップは別)に集積し、粗い波長多重(Coarse Wave Division Multiplex)システムをシリコンチップで実現したのは初めての成果である。なお、このシステムの実現に当たっては、4つの波長の光のマルチプレックスとデマルチプレックスを行う部分がキーであるが、この部分がどのようになっているかについては明らかにされなかった。

しかし、この部分の波長特性は公表された。波長特性の図で4つの山それぞれの一番内側の幅の狭いものがレーザーの発光強度で、実線が送信側のマルチプレクサの波長特性、破線が受信側のデマルチプレクサの波長特性である。そして、これらの波長特性のアライメントは1nm程度を達成していると述べられている。

各波長のレーザーとマルチプレクサ,デマルチプレクサの波長特性

なお、このシステムは研究所で作った実験システムであり、商品化を目指したものではない。この技術の開発を進めて、将来的には各チャネルを40Gbpsに 高速化し、25波長を1本の光ファイバにまとめて1Tbpsの光伝送も可能になるという見通しを述べていた。