新作全編EOS 5Dで撮影したロードムービー
――今後のご予定はどうなっているのでしょうか。
堤「WOWOWのスペシャルドラマ『コヨーテ、海へ』を監督しました。佐野元春さんのアルバムをテーマにニューヨークとブラジルで撮影したロードムービーで、全編EOS 5Dで撮影しています」
――堤監督は新しい機材をよく使われますね。
堤「機材オタク的な部分はないのですが、どんどん取り入れたいですね」
――デジタル一眼による動画撮影のメリットを、堤監督の感じている範囲で教えてください。
堤「今回、使ってみて感じたのですが、誰も映画やドラマの撮影をしているとは思わないというのが、とにかく良い部分です。どんな場所でも周囲を気にせずに撮れました。あとは、少人数でスタッフを構成できるという部分も魅力的です。『BECK』は100人体制ですが、昔、僕がPVを撮っていたころは3人とかでやっていました。そういう現場では、アイデアが大切になってきます。デジタル一眼でも、撮影人数が少ない分、アイデアに集中してくる。そこに魅力を感じます」
――逆にデメリットは感じましたか。
堤「あくまで高価なカメラに似たような画のクオリティの表現しかできないという部分ですね。ビデオ信号独特のモアレには、まだまだ弱いと感じました」
――堤監督は、いつも働き過ぎという印象があるのですが、他にはどのような予定があるのでしょうか。
堤「10月放送開始の連ドラを監督しています。内容に関しては、"SFです"としかいえせん(笑)。あとは仲間由紀恵さん主演の舞台『テンペスト』の演出を担当しています」
――これまでも、職人とご自身の事を語られていましたが、その仕事スタンスに変化はないのでしょうか。
堤「僕が最近、強く感じているのは、これまでの僕はカウンターというか、ロックの側の人間として映像に参画しているという自覚があったのですが、それが、『20世紀少年』や『BECK』を作って完結したということですね。今は社会派というか問題意識の強い作品を作りたいという気持ちが出てきています」
――今後は、これまでの職業監督的ではない堤監督の姿が見られるかもしれないんですね。
堤「それが作家性と言われれば幸せなんですが、とにかく自分が撮りたいと思うものに、がむしゃらにむしゃぶりついていきたいですね」
撮影:石井健