マンデリン同様、セミウォッシュドで

一通り農園を観察したあとにスハルマンさんが案内してくれたのは焙煎小屋。ここでは、精選や焙煎も施設内で行っている。私たちが日頃、目にしているコーヒー豆はコーヒーチェリーというコーヒーの実の種子にあたる。その外側には果皮や果実、パーチメントという硬い内皮などが層をつくっていて、焙煎するにはこれらを除去する必要がある。これを精選といい、この作業は1通りの方法ではなく、地域や品種によって方法が異なる。ウォッシュド、アンウォッシュド、セミウォッシュドがあり、この農園で採用されていたのはセミウォッシュド。この方法では、果皮・果肉を取り除いて天日乾燥させ、パーチメントを脱穀して焙煎する。実はこのセミウォッシュド、インドネシアのマンデリンコーヒー栽培地区で採用されている方法である。

コーヒーチェリーは、外皮をむくと果肉やミューシレージ(粘質の層)などが層をつくっており、中心部に私たちがコーヒー豆と呼ぶ生豆がある

精製を経て焙煎へ。インドネシアではよく見られるセミウォッシュドの手法を用いている

天日乾燥中の雨は大敵なのだが、同農園では屋根のない場所で乾燥させている。「屋根がなくて大丈夫なの? 」とスハルマンさんに聞くと、「天日乾燥させる7月~8月は乾季だから大丈夫です」とのことだった。なるほど。

焙煎後のコーヒー豆

焙煎機はかなり原始的なつくりだが、1回20kgの豆が焙煎可能。焙煎小屋に行くと、コーヒーのテイスティングが体験できる。コーヒー粉に湯を注ぎ、上澄みを飲むインドネシアのスタイルで楽しめる。一緒に出てきたのは黒糖。なんとこの黒糖もこのリゾート内でつくったものとのこと。コーヒーのお味はというと、かなりパンチで苦味もあるため、ストレートよりミルクや砂糖を加えて楽しむといい感じ。ということで黒糖と一緒にいただくと、ほろ苦甘いチョコレートのような味わいになった。インドネシアの山奥でこんなマリアージュが楽しめるとは!

インドネシアのスタイルでいただくコーヒー。黒糖を口に含みつつ飲むと、ほろ苦甘いチョコレートのような味わいに

レストランではコーヒー&スイーツのプレートも

レストランに行くと、コーヒーとスイーツのプレート(4万5,000ルピア)も楽しめる。コーヒープレスで淹れたコーヒーと黒糖、マドレーヌ、チョコレートケーキがワンプレートになっている。コーヒーカップにはシナモンスティックも添えられており、これでクルクルとコーヒーを混ぜてから飲むと、ほのかにシナモンの香りが漂うフレーバーコーヒーに仕上がる。黒糖、シナモン、スイーツとコーヒーを組み合わせて、色々なマリアージュを楽しんでみてほしい。

レストランでオーダーできるコーヒーとスイーツのプレート

また、コーヒー豆は同リゾートのスーベニアショップで販売しているので、ここでしか買えない豆をお土産にすればきっと喜ばれることだろう(1万7,500ルピア / 100g ・3万5,000ルピア / 250g)。

「コーヒーってこういう環境で育つんだ」。そう感じながら飲むコーヒーは格別で、なんとも奥深い味わい。白く可憐なコーヒーの花の香りをかいでみたり、赤く熟したコーヒーチェリーの皮を剥いて構造を確かめてみたり。そんな体験を通して、もっとコーヒーのことが知りたくなってきた。きっとこれはコーヒーの世界の入り口に過ぎない。まだまだその先に、奥深いコーヒーの世界が広がっているのだろう。ますます探究心が掻き立てられた今回のプランテーションツアーだった。

真っ白なコーヒーの花。

※表記している料金には、別途21%の税金とサービスチャージがかかる。

撮影: 福田栄美子