IE6と比較して70倍速い

マイクロソフト 五寳匡郎氏

また、マイクロソフト ディベロップメントの五寳匡郎氏からさらに、IE9についての具体的なシステムの話があり、パフォーマンスの向上については、JavaScriptエンジン「Chakra」についての詳細の解説が行われた。「Chakra」については、IE8でも進められていたいたマルチコアCPU対応機能がIE9でさらに発展。スクリプトエンジンの統合がおこなわれたことによって、今まで個別のプラットフォーム毎に処理されていたものがIE9の中で処理されるようになったことだという。

具体的にはVBScriptとJScriptなどのDOM(Document Object Model)をCOMコンポーネントでつなげるという複雑な処理からJavaScriptエンジンChakraをIE の中に入れてしまうという抜本的な仕様の変化、下位互換性のもとに改善できなかった処理なども改善してしまうことで高速化を達成。これよって、スピードがIE8と比較して10倍速くなり、IE6と比較すれば70倍にも高速になった。

飛躍的なスピードアップ

また、もう一つ大きな点として新しくレンダリングエンジンにDirectX APIを採用したことを挙げる。五寳氏は、「早い話IE9がDirectXアプリケーションになった」とする。今までCPUを利用してレンダリングをしていものが、GPUを利用することにより、さらなる高速化が実現した。これに対応していないものに関しては、ソフトウェアによって制御によってGPU処理が行われる。この場合、GDI処理になるのではなく、DirectXエミュレーションモードによって処理が行われるようになるとのこと。

今まで同様の処理を行うには、レジストリを直接書き換える必要があったがIE9では、インターネットオプションの設定によって簡単に処理を変更できるようになる。また、これらの処理はIE9がマシンの状態をチェックして自動的に行われるので、もし、速度があまりあがっていない場合は、[アクセラレータによるグラフィック]のチェックを確認してほしいとのことだ。遅いなと思ったらユーザーはこのチェックボタンで高速化を得られる場合がある。ユーザーにとってはシンプルで楽しいチェックボックスに。

そのほか、アドオンのパフォーマンスモニタリングツールなども搭載されており、ユーザーのパフォーマンスに影響をあたえそうなアドオンを個別に評価するアドオン パフォーマンス アドバイザーでは、個別のアドオンがブラウザに与えている影響を数値で表示されるのでユーザーはこれを指標に、アドオンのオン/オフを個別に判断できるなど快適な機能も搭載されている。

インターネットオプションの設定

ライトニングトークセッション

サイボウズラボ 竹迫良範氏

また、後半よりライトニングトークセッションとして、今回のIE9ベータ版の誕生についてそれぞれのゲストから簡単な講演が行われた。サイボウズラボ竹迫氏は、古いコーディングや仕様が廃止される中、今回のIE9でもサポートされている、EBCDICというエンコーディングについてのプレゼンテーションを行った。EBCDICは、46年前に登場したIBMのSystem/360の時代に使われていた文字エンコーディング。

はせがわようすけ氏

はせがわ氏は、HTTPとHTTPSの中間にあたる役割を果たす、HSTSについて講演。HSTS(HTTP Strict Transport Security)とは、HTTPとHTTPS両方を利用しているサイトにおいてHTTPSへのアクセスを強制するセキュリティ機能。IE9でも利用できるが、このあたりの機能においては現段階においてはまだ完全では無い部分もあるようだとする。

Mozilla Japan加藤誠氏

Mozilla Japan加藤氏は、「おめでとうございます」との言葉のあとにNetscape時代からも含めてMozillaとの間で長年繰り返された応酬(IE4の発表の際にNetscapeの敷地に乗り込んできて"e"のマークの置物がおいていかれて、その上に置き換えした話など)についてのエピソードの数々も披露。その上で「JavaScriptのベンチマーク自体はどこでも大して変わらないと思う。GPUを利用したブラウザの高速化は今後の景気回復にも役立つので、その意味でもGPUを使うブラウザは今後は重要になる。ビデオについてはIE9が速いと思う」とし、加藤氏は互いの健闘を称えつつ、これからも競い合ってブラウザ発展させていくことが重要だと語った。

過去の数々の応酬を披露