キヤノンが2010年秋モデルとして発売するインクジェットプリンタ「PIXUS」は、デザインと操作性を両立させる「Intelligent Touch System」が大きな特徴だ。今回発表されたラインナップの中では、上位2モデルとなる「MG8130」と「MG6130」が「Intelligent Touch System」を採用している

キヤノン 総合デザインセンター 専任主任 島村順一郎氏

「PIXUS」が2004年にボックススタイルのデザインを他社に先駆けて採用して以来、インテリアに馴染むデザインを追求してきたキヤノンの新しい一歩が「Intelligent Touch System」だ。使う時には使うべきボタンだけが光りユーザーを誘導するが、使っていない時には本体と同化し、ほとんど見えなくなる。

「以前はディスプレイをたたんで操作部を覆うようにして、非利用時にボタンが隠れるようにしていました。自分たちでそうした制約を作ってきたわけですが、静電タッチでの操作を採用することで普段は見えないボタンというものを実現できました。これによって、広い範囲を操作パネルにすることができたのです」と総合デザインセンターの島村順一郎氏は語る。

「PIXUS」の2010年秋モデルに搭載されている「Intelligent Touch System」

キヤノン 総合デザインセンター 専任主任 堀越一寿氏

根本的なコンセプトからの変更となる今回の製品開発は、2年前からスタートした。「リビングに置いて違和感のない物が欲しい」というようなダイレクトな声とともに、実際に使っている様子を観察して、使いづらい部分を改善していくことも検討課題となった。

「無線LANが普及し、プリンタがPCの横ではなくリビングに置かれるようになったという事情があります。置いてみたら違和感が強かった、使っていない時間が長いのに目立つ、というような声が多くありました。また、多機能化が進むにつれてメニューが複雑化していたため、わかりやすさも必要だと感じました」と語る堀越一寿氏は、ユーザビリティに関わる部分を担当している。

部署を横断したチームで一丸となって開発

キヤノン 総合デザインセンター総合デザインセンター 部長 犬飼義典氏

操作パネルは静電タッチパネルを採用し、押すというよりは触れる感覚で使える。使っていない時にはボディの黒に同化して見えなくなるデザインだ。これらの方向性が定まった時、総合デザインセンターでは実際に光るモックを制作した。 「非常に好評で、この方向で行こうと決まったのですが、一体どういう素材を使えば実現できるのかもわかりません。当時は参考にできるような製品もなく、手探りで10種類以上の素材を試しました」と島村氏。テスト素材を使った場合の色や厚みは実際に作ってみなければわからないため、多くの試作が重ねられたという。

「大きな範囲を部分ごとに光らせるための制御が難しく、妥協しようかという話が出たこともあります。しかし、最初にモックを見た時のインパクトを忘れてはいけないと考え、イメージにこだわりました。実現に向けて早い段階から部署を横断したワーキンググループ的なものが作られ、技術的な打ち合わせにもデザイン部門の人間が参加するなど、一丸となって取り組みました」と総合デザインセンター 部長の犬飼義典氏は語る。

「Intelligent Touch System」では、必要のないボタンはボディの黒に同化して見えなくなる