難易度が大きく跳ね上がったETロボコン2010
組み込みソフトウェア技術者の人材育成の一環として行われるロボット競技「ETロボコン」。9回目となる今年も「Eロボコン 2010」として9月4日、5日に開催された東京大会および九州大会(5日はワークショップのみ)よりその戦いの幕を開けた。
今回の開催より、大会会場は北海道、東北、北関東、東京、南関東、東海、北陸、関西、九州、沖縄の10地区に拡大されたが、走行体もLEGO Mindstormes NXTに一本化され、それに併せてコースの大幅に見直しが行われたこともあり、参加チームは全国で昨年よりも10チーム減となる343チームとなった(参加人数自体は1700名程度と昨年と同規模)。
特に、コースの変更により難易度が引き上げられており、コース上にはこれまでなかった立体的な難所も2カ所用意された。走行競技については、競技フィールド1週(約20m程度)をどれだけ早く走るか、という従来のルールと根本的に変わりはなく、アウトコース、インコースそれぞれに用意された難所をクリアすることで、走行タイムにボーナスを受けることが可能となる。
その難所だが、アウトコースには3次元構造の「シーソー」、「階段」を配置。インコースには「ミステリーサークル」が配置され、アウト/インコース共通の難所として、「中間ゲート」およびゴール後に入る「ガレージ」が配置されている。
シーソーは文字通り、シーソーを通過するというもので通過で20秒、その上で停止すると60秒のボーナスが与えられる。また階段は、2段階の高さで構成されたもので、通過で20秒のボーナスが与えられる。一方インコースのミステリーサークルは、今回のコースでもっとも難しい課題といえる仕組みで、走行前にランダムで走行するコースを決定、それに応じた走行を行うことで40秒のボーナスが得られるが、違うコースを走行した時点で失格となるという厳しさ。このため、モデルの時点でそれを選んだチームが少ないとのことで、実際に東京地区大会1日目(東京Aブロック)の走行での成功者は0であった。
また、モデル審査基準も昨年までのものから変更が行われており、従来の「書き方」「内容」に加えて、「追加課題(並行性設計)」、「オリジナリティ」が追加、4項目での採点となった。この内、書き方と内容に関しては減点方式が採用されており、この結果と走行結果を加味したものが採点基準となる。
レギュレーション変更で難易度が上がった新コース
もっとも、東京Aブロックの完走率は1回目の走行で32%(登録41チーム、参加40チーム)、2回目の走行では25%と例年にないほど低く、特にアウトコースは、第1コーナーにたどり着けないチームが多数見受けられた。
実際、同日に行われていた九州大会の完走率は1回目の走行で50%、2回目で45%(2回とも完走したのは参加43チーム中11チーム。なお43チーム中3チームがエキシビジョン参加)とのことで、東京地区大会の会場が工学院大学1Fの「アーバンテックホール」で、天窓からの太陽光の照射という外乱要因が例年起きることを踏まえても、昨年に比べて4日、5日ともに直接日光がコース場に光の段差を作るといった様子もなかったことから、運営スタッフからは(同日開催された)九州と走行結果についての差が生じているとの指摘がなされていた。
また、難所へ挑戦するといった気概も九州と東京Aブロックでは異なっていた。東京Aブロックの難所挑戦の比率としては、成功回数で見ると、ミステリーサークルは0回。ガレージインも1回、階段も片手で指折り数えられる程度で、1番人気のシーソーであっても2回の走行合計で両手の指で数えられる程度の成功数であった。一方の九州は、というと、かなりのチームが難所への挑戦を行っており、ミステリーサークルも(完走したチームの内)5チームが成功するなど、当日、各チームの走行状況を見ていたETロボコンの本部・実行委員長の星光行氏も「(東京Aブロックは)難所云々以前の問題。もっと挑戦する気概を見せてもらいたい」と苦言を呈していた。
九州大会の難所成功率(完走チームの成功比率)
- ミステリーサークル 7.0%(5/43チーム)
- シーソー通過 16.3%(7/43チーム)
- シーソー停止 0.0%(0/43チーム)
- 階段 14.0%(6/43チーム)
- インコースガレージイン 14.0%(6/43チーム)
- アウトコースガレージイン 7.0%(3/43チーム)