醤油は東武野田線の地下を通って容器詰め工場へ
見た目も香りも味噌っぽいのは、つくる工程が味噌と醤油で似ているため。熟成が終わると、もろみを搾り、液体分を取り出す。まず、幅3m、長さは2,800mもある非常に丈夫なナイロン製の布を、幅1mで3ツ折りにして筒状にし、中に熟成したもろみを入れる。これを10時間かけて自然に液体分(=醤油になるもの)をにじみ出させ、その後圧力をかけ、10時間かけてゆっくりと搾り切る。この作業は18年前まではすべて人の手で行われており、200人ぐらいで搾っていたのだそう。いまは機械化して最大2,000tもの圧力をかけて作業を行っている。その後、3日間ほど置いて浮いてきた油や沈殿したおりを取り除く。ちなみに醤油かすや油などは、家畜の飼料やボイラーの燃料に活用されている。
その後、色・味・香りを整えるために火入れを行ない、容器詰めとなる。ちなみに容器詰めは駅の反対側にある工場で行なわれており、東武野田線の地下を通るパイプで醤油が運ばれていくのだそう。これが先ほど述べた「東武野田線の地下には醤油が流れている」につながるわけだ。
もう1つのトリビア「東武野田線は醤油を運ぶために作られた」の解説もしておこう。キッコーマン工場のある野田は、原料となる大豆や小麦が関東平野で栽培され、また食塩は江戸川を利用して船で運搬できるなど、地理的に醤油づくりに適した土地。そこで、約350年前の江戸時代初期から醤油づくりが始まったわけだが、出来上がった醤油は明治時代に入っても船で江戸へと運搬されていた。しかし明治44年に千葉県営軽便鉄道によって、柏 - 野田町(現野田市)が開通。そこからは鉄道を使っての輸送となるのだが、この柏 - 野田町(現野田市)が、現在の東武野田線のものとなるのだ。
醤油づくしのメニューがリーズナブルに
工場見学の後は、館内にあるイートインコーナー「まめカフェ」でひと休み。醤油を使った「しょうゆソフトクリーム」(250円)や、もろみを使った「特製もろみ豚汁」(150円)など、工場ならではのメニューが手頃な価格で揃う。また、無料の「しょうゆの味くらべ体験」や、セルフでせんべいを焼き上げる「せんべい焼き体験」(3枚210円)も楽しい。
無料の「しょうゆの味くらべ体験」。キッコーマンのスタンダードな醤油、国産の原料を使い、杉の大桶で1年かけてじっくり熟成させたもの、減塩タイプの3種類の醤油を味比べできる |
「しょうゆソフトクリーム」(250円)。甘さ控えめで、おせんべいのようにほんのり香ばしい。豆乳を使ったさっぱりした味わいの「豆乳しょうゆソフトクリーム」(250円)もある。夏場は1日200~300本も売れる人気商品 |
お土産コーナーもあり、通販以外ではここでしか買えない「丸大豆生しょうゆ」といった限定商品も販売している。"大人の工場見学"として知識を蓄積するもよし、夏休みのうちに子どもと一緒に見学するもよし。私たち日本人の食生活とは切っても切り離せない関係にある醤油を今一度見直してみるよいきっかけになることだろう。