Acronisブートシーケンスマネージャで起動する

さて、変換したVHD形式ファイルの活用方法だが、Windows 7 EnterpriseおよびUltimateエディションをお使いならば、VHD形式ファイルから直接コンピュータを起動できるが、「bcdedit」コマンドを使ってブートエントリの作成を行わなければならない。クラスIDを用いたコマンドライン操作は実に難しいため、コンピュータ中上級者でもタイプミスなどの操作ミスにより、誤動作を起こしてしまう可能性がある。

そこで試して欲しいのが、VHD形式ファイルやAcronisバックアップイメージファイルからコンピュータの起動を可能にする「Acronisブートシーケンスマネージャ」だ。文字どおり起動制御となるWindows 7のブートマネージャをGUIから簡単に操作するためのツールで、煩雑なコマンドライン操作を行わずに済むのは実にありがたい。Acronisブートシーケンスマネージャを使用するには、前述のとおりWindows 7 Enterprise/Ultimateエディションを使用し、Acronisバックアップイメージファイルは事前に動的VHD形式に変換しなければならない。

また、VHD形式ファイルの場所も重要なポイントだ。基本的にVHDファイルはシステムパーティション以外の場所に置かなければならない。これは、VHD形式ファイルを用いたコンピュータ起動時は、動的VHD形式ファイルは最大サイズに展開されるため、ディスクの空き容量が影響するからだ。また、ページングファイルの容量として5GB程度の空き容量も必要である。これらの諸条件からVHD形式ファイルを起動するのは、バックアップを作成したホストドライブ+5GB以上の空き容量が必要となり、VHD形式ファイルの場所が重要となるのだ。

上記の点に注意すれば操作は簡単。「Acronisブートシーケンスマネージャ」を起動し、VHD形式ファイルを参照すると、自動的に必要なディスクの空き容量がダイアログ上で示される。この点がクリアしているか確認してからコンピュータを再起動すれば、Windows 7のブートマネージャに、VHDファイルがメニューとして加わる(図18~23)。

図17 メイン画面の「ツールとユーティリティ」から「Acronisブートシーケンスマネージャ」をクリックする

図18 「Acronisブートシーケンスマネージャ」が起動したら、<追加>ボタンをクリックする

図19 ダイアログが起動したら、列挙されたVHD形式ファイルを選択して<OK>ボタンをクリックする。列挙されない場合は<参照>ボタンでVHD形式ファイルを選択しよう

図20 この時点で必要なディスクの空き容量が示される。空き容量が足りない場合、VHD形式ファイルからコンピュータを起動できないので注意して欲しい

図21 <OK>ボタンをクリックして元のダイアログに戻ると、起動メニューにVHD形式ファイルが並ぶ。順番の入れ替えやメニュー項目名の変更も可能だが、ここでは<OK>ボタンをクリックして「Acronisブートシーケンスマネージャ」を終了させる

図22 コンピュータを再起動すると、Windows 7のブートメニューには先の設定で追加した項目が並ぶ。同項目を選択すればVHD形式ファイルから起動可能になる

バックアップしたシステムが正しく起動できるか確認する場合、通常は復元操作が必要だったが、Windows 7 Enterprise/Ultimateエディションユーザーであれば、VHD形式ファイルから起動することで、復元操作を伴わずにバックアップデータの検証が可能になる。Windows Virtual PCがインストールした環境であれば、VHD形式に変換したファイルを仮想ハードディスクファイルとして選択することで、同環境からゲストOSを起動することも可能だ(図23~24)。

図23 VHD形式に変換したバックアップデータを、仮想ハードディスクファイルとして選択する

図24 画面のようにWindows Virtual PCから起動することもできる。並行作業中でコンピュータを再起動できないときは、こちらの操作が簡単だ

Windows 7標準バックアップ機能を用いず、「Acronis True Image Home 2010」でバックアップ環境を統一する場合、通常のバックアップデータは拡張子「.tib」を持つAcronisバックアップイメージファイルで統一し、前述のような確認作業を行う場合はVHD形式ファイルに変換して、直接起動やWindows Virtual PCなどの仮想化ソフトウェアを用いることができる。TIB-VHD形式の相互変換機能は、このような場面に活かして頂きたい。