auが取り組む品質向上の対策は、基地局のチャネル増強やスペック向上などのインフラ対策、地下鉄・鉄道対策や屋内対策などのエリア対策、CPUの高速化やユーザビリティへの配慮といった移動機対策の3点。

例えば地下鉄駅では、構内に設置された各社の共用アンテナからレピータを経由し、いくつかの駅をまとめて光ケーブルで地上のアンテナに接続しており、1基の基地局で複数の駅をカバーしている。首都圏の地下鉄では、トンネル内は電波が届かないため、駅に着いたときに一斉に通信が行われ、つながりにくいなどの課題があったが、急激なトラフィック増加に対応した設計を行ってチャネルを増やす対策などを行った結果、au One Topページの接続時間が約40%短縮するなど、首都圏の地下鉄全駅ですでに改善が行われたそうだ。

地上にある鉄道駅では、周囲のビルなどにある屋上基地局などから電波を受信しているが、これも同様に改善を行った結果、Eメール送信時間が山手線全駅で約40%短縮したという。

なお、従来地下鉄駅は800MHz帯の周波数帯を利用していたが、現在は2GHz帯を中心にエリア展開を行っている。特に同社の800MHz帯は上り下りを入れ替える再編が実施されることになっており、今後構内の800MHz帯アンテナは使えなくなるという。そのため再編後は、2GHz帯で地下鉄駅はカバーするそうだ。

また同社によれば、昨今はソーシャルゲームのようなアクセスを頻繁に行うものの、上りデータ量はそれほど多くない通信が増加しているという。従来の基地局では、上り通信が混雑すると、通信速度を抑える仕組みになっていたため、全体でデータ量は多くないのに通信速度が低下していた。これに対して、基地局のチャネル増強や性能の最大化を行うことで、通信速度が低下しないようにしたという。

移動機については、今夏のモデルから一部で採用された高速CPU「Snapdragon」によって、Eメール送信時間が約20%、検索サイトの接続時間が約30%改善するなど、体感速度が向上。送受信中のプログレスバー表示を導入するユーザビリティへの配慮によって、顧客満足度も向上したという。

ユーザビリティ改善の例

こうした取り組みの結果、大容量データのダウンロード時間が20%短縮。Rev.Aの採用などもあって、ダウンロード速度は次第に増加している

また、auでは通信規格としてCDMA 2000 1xを採用するが、過去には増速規格のEV-DO Rev.Aを導入して速度向上を図っており、さらに今年秋冬モデルからは、さらなる高速化を目指してEVDOマルチキャリアを導入する。従来は、例えば2つのキャリア(RF)があっても1台の端末は1つのキャリアしか利用できなかったが、マルチキャリアでは、2つのキャリアのうち空いているスペース(タイムスロット)を利用できるのでつながりやすくなるほか、2つのキャリアを同時に利用できるため、通信速度も向上する。

今後、EVDOマルチキャリアによって既存の環境を高速化し、2012年以降にはLTEを導入する

従来は2つのキャリアの一方しか利用できず、使われないキャリアに空きがあってもその端末は利用できなかった。これに対してマルチキャリアでは、2つのキャリアの中で、空いているスロットを利用できるようになる

これによって、理論値では下り最大9.2Mbps、上り最大5.5Mbpsへと高速化を実現。同社の試験では最大3.7Mbps程度の通信速度が実現しており、実環境でも2Mbps程度の速度は出せるのではないか、としている。

同社では今後も継続的にエリア改善を続けていく考え。800MHz帯再編後は、従来の倍の密度でエリア展開をしていくなど、フェムトセルを含む基地局の拡充も力を入れていく方針だ。