「全日本チーム」の必要性
中西氏は今回の基調講演において、繰り返し「現地のニーズへの対応」「全体最適」が重要であると述べた。これは単なるグローバルな事業展開だけではなく、地域に根ざした「現地視点」での取り組みのことを示す(同社はこれを"地域との協創" "グローカル"と呼ぶ)。
現在世界では、新興国においては社会インフラの整備、先進国ではインフラの再構築が進行している状況だ。このような世界の社会インフラの投資動向を踏まえて中西氏は、「国際競争を勝ち抜くという視点では、1社だけでは対応が困難」とし、社会インフラの計画策定段階からサービス設計、システム設計・構築、運用・保守サービスに至る一連のプロセスにおいて、国家や関連機関、パートナー企業、他業種などを巻き込んだ「全日本チーム」で取り組む必要性を訴えた。
日本が持つ世界的な競争力とは?
先述のように、日本は水や電力インフラなどの生活インフラに関して、世界有数の「快適な」インフラを持つ国とされる。中西氏は、「日本の強みは『精緻なモノづくり』の技術」と「消費者の厳しい目」だと語り、これが現在の日本の社会インフラの根底にあるという考えを示した。同氏は、「このノウハウは地球規模の価値を生む」とし、これこそが日本の競争力の源泉になるという。 同社によると、天津エコシティのような次世代都市の構成要素は、「電力」(スマートグリッド)、「鉄道」(次世代交通システム)、「道路交通」(グリーンモビリティ)、「水」(インテリジェントウォーター)だそうだが、同社は、そのすべての領域が守備範囲に入るという強みを持つ。
中西氏は、「100年後がどのようになっているかを予測することは難しい」としながらも、「技術の方向性は見えてきた」として以下の3つの要素が今後急速に進歩すると指摘した。
1つ目は、トラブル予防や安全確保など、人間が認知できない部分のサポートを実現する「センシング技術」、2つ目は、製品の試作や試験など、人間が"考える"ことをサポートするための「シミュレーション技術」、3つ目はセンシング技術の能力を現実世界に還元するための「フィードバック技術」だそうだ。
最後に中西氏は「やはり先立つものは"技術"である」と力強く語り、「次の100年も日本と世界の社会イノベーションを支えていきたい」として講演を締めくくった。