最大のミッションは顧客に入り込んで課題を解決すること

NTTデータ 製造ビジネス事業本部 企画推進部 部長 小川兼一郎氏

「本当の意味でSAPコンサルタントといわれる人材は、ソリューション軸のスキルを持つにとどまらず、顧客軸のスキルを兼ね備えていなくてはならない。いやむしろ、顧客軸を中心としたスキル形成が必要だ」

NTTデータでSAPビジネスを担当する製造ビジネス事業本部企画推進部部長を務める小川兼一郎氏は、こう切り出した。

また、製造ビジネス事業本部企画推進部戦略企画担当課長を務める安藤純氏は、「顧客が求める本質を見抜くことに加えて、それを具体的な提案として解決を図ることが大切。それが顧客軸を中心としたビジネスの展開にもつながる」と異口同音に話す。

NTTデータでは「顧客軸」という言葉がよく使われる。これは、顧客の中に入り込んで経営や事業そのものまでサポートするという考え方だ。これに対し、製品の技術や機能といった観点からの取り組みを「ソリューション軸」という言葉で表現する。

「SAPのソリューションはパッケージであるため、顧客の業務をSAPのソリューションの機能に合わせるといった提案が行われがちだ。この場合、パッケージSEが前面に出ることになる。しかし、日本のユーザーの業務に最適化した提案を行うには、顧客の中に入り込んで課題を知り、そして、SAP製品だけで実現できない部分は作り込む必要がある。そこに、NTTデータのSAPビジネスの特徴がある」と、小川氏は語る。

国内外に広がる60のグループ企業でSAPビジネスをサポート

NTTデータ 製造ビジネス事業本部企画推進部戦略企画担当課長 安藤純氏

NTTデータがSAPビジネスを開始したのは、1994年にまで遡る。日本におけるSAPビジネスを手がけたSIerとしては、かなり早いスタートだ。1997年からはSAP専任部門を社内に設置し、SAPジャパン認定のSAPサービスパートナーとして、導入コンサルティングから運用サポートまで一貫したサービスを提供してきた。

99年には、パイオニアの情報子会社のM&Aを実施して、製造業向けのSAPビジネスを強化。また、セイコーインスツルの情報子会社のM&Aを行い、これをNTTデータ ソルフィスとして統合したほか、NTTデータウェーブによって食品・バイオ関連分野へ、NTTデータ三洋システムにより家電分野にも進出した。さらには、SMFGおよび日本総研が出資するJSOLなどといったグループ会社とともに、国内におけるSAPビジネスを広く展開する体制を確立してきた。

またその一方、2008年には、中堅・中小企業向けのSAPビジネスにおいて世界ナンバーワンの実績を誇る独アイテリジェンスと資本提携を行った。同社を通じて、仏アデランテ(現itelligence France)、米アール・ピー・エフ・コンサルティングをグループ化。さらに、豪エクステンドテクノロジーズ、蘭2B Interactive、マレーシアのビジネスフォーミュラのM&Aを行うなど、グローバルでSAPビジネスを推進する体制が整えられている。

現在、NTTデータグループとして、SAPビジネスを展開するグループ企業は、国内外合わせて実に約60社に上る。

「業種、規模、地域といった観点から、SAPビジネスにおけるホワイトスペースを埋めていく形でM&Aを推進している。今後は、アイテリジェンスが持つ全世界1,000社以上への導入実績や、中堅・中小企業向けSAPアプリケーション、テンプレートも積極的に活用していきたい」(小川部長)と語る。

運用保守のグローバル対応とSMB市場への事業拡大に注力

こうした体制強化の下、NTTデータが今後SAPビジネスとして力を入れていくのが、「運用・保守におけるグローバル体制の確立」と、「国内における中堅・中小企業の事業拡大」である。

運用・保守におけるグローバル体制の確立では、アイテリジェンスが持つ欧州、米国、マレーシアのデータセンターの活用などにより、海外へ進出する日系企業への運用・保守支援体制を構築できるほか、日本のユーザーに対しても24時間の保守体制が提供できるようになる。

一方、国内における中堅・中小企業に対する事業拡大としては、これまで国内では手つかずだった年商数10億円~数100億円規模の企業に対する提案を加速する考えだ。

「SAPのソリューションが中堅・中小企業に広がりを見せる一方で、当社のクラウドサービスであるBizXaaSによって技術的見地からも導入の素地が整ったことが背景にある。加えて、アイテリジェンスが持つグローバルでのノウハウと実績も活用できる」(安藤氏)

この2つの新たな取り組みとともに、これまでのラージアカウント向けビジネスによる3つの柱が、NTTデータにおけるSAPビジネスの基本戦略となる。