6月22日(米国時間)、米Salesforce.com主催のユーザー/開発者イベント「Cloudforce 2010: San Jose」が米カリフォルニア州サンノゼで開催された。Cloudforce Tour 2010の名称で行われていた全世界キャンペーンの最終開催地となっている。同社会長兼CEOのMarc Benioff氏やスペシャルゲストらが登場し、エンタープライズSNS機能を提供する新サービス「Chatter」や、同社初となるiPhone/iPad向けアプリの提供など、昨今の最新トレンドをふんだんに盛り込んだ内容が発表された。

Cloudforce Tour 2010の最終開催地にあたる「Cloudforce 2010: San Jose」が6月22日に開催された米カリフォルニア州サンノゼ市内のSan Jose McEnery Convention Center

米Salesforce.com会長兼CEOのMarc Benioff氏。日本からの帰国直後だという。その詳細は後ほど本文で

イベントでのキーノート開幕冒頭、Benioff氏は突然1枚のスライドを表示して、その感想を語った。スライド写真には2名の青いシャツを着た男女が写っており、同氏によれば、これはMicrosoftの宣伝部隊だという。「これを見てどう思うだろう? Microsoftがビジネスの妨害に来るというのは、それだけクラウドに対する抵抗があるということだ。それがイベントの妨害であれ、訴訟であれ」と述べ、先月明らかになったMicrosoftの同社に対する裁判を揶揄した。同氏にとってこれまでで最も素晴らしい出来事とは、このMicrosoftによる訴訟であり、「一人前の企業として認められた」ということだったようだ。

このように、一時期「The end of Software」を会社のスローガンにしてたBenioff氏は、同日のイベントでいわゆる"旧式"のソフトウェア企業と呼ばれる各社に対する攻撃的、挑発的コメントが止まらなかった。通常であれば、まず最初にSalesforce.comが主体とするクラウドやSaaSのメリット(マルチテナントや料金モデル)を紹介しつつ、新サービスを紹介するといった手順を踏むのだが、今回はソフトウェア業界の2大巨頭であるMicrosoft、そして同氏の古巣であるOracleをことあるごとに揶揄していたからだ。たとえば米IDCの「3年間のTCOを54%削減」というコメントを引用し、Salesforce.comを導入すればアプリケーション実行速度で5倍、コスト面で1/2というメリットを享受できるという。従来型のラックに多数のハードウェアを並べるようなスタンスでは効率が悪く、その悪いクラウド例としてOracleの「Exadata」を挙げていたほどだ。

Benioff氏は効率性に関するデータを具体的に挙げてアピールする。現在、Salesforce.comは7万7,300の顧客企業を抱えているが、これらを世界にある3つのデータセンターで賄っているという。米MicrosoftのChief Research and Strategy OfficerであるCraig Mundie氏との会話で「何台のサーバでシステムを運用しているのか?」と質問され、全部で3,000台のサーバだが、そのうちの半分はディザスタリカバリ用の待機サーバだと説明し、その効率性で相手を驚かせたエピソードを紹介する。

「マルチテナント」「利用料課金」とは、以前よりうたっていたSalesforce.comの特徴を示すセールストークだが、ここにきてスピードとコストの両面での「効率性」を強くアピールするようになった。そのBenioff氏が悪いクラウドの例として挙げるのが、古巣であるOracleが最近リリースしたExadataのようなシステムだ

同氏はこのほか、イベント直前まで滞在していた日本での例を紹介し、一部の企業がラックマウントサーバを大量に並べてシステム管理している様子を見て、「効率性」ではクラウドに勝るものはないと強調。来年2011年にも世界で4番目となるデータセンターを東京にオープンする計画を発表し、主に日本のユーザーを対象としたさらなるクラウドの活用を訴えた。これら新データセンターのオープン以降、ユーザーは好きな拠点を選択してアプリケーションの稼働が可能になるという。

またSalesforce.comとは直接関係ないが、同氏の最新成果として、米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校(UCSF)に1億ドルを寄付したことも紹介された。UCSFが現在サンフランシスコのミッションベイエリアに建設を進めている病院の名称が「UCSF Benioff Children's Hospital at Mission Bay」となったという。UCSFは医療系大学の名門として知られているが、現在キャンパスをサンフランシスコ半島の中心部から、再開発エリアである半島東部に移転中だという。ちょうど野球スタジアムのAT&T Park裏側にあたるこのエリアは港湾関連の工場が密集する場所で、浮浪者が昼間からカートを引いて徘徊しているなど、従来は非常に治安の悪いエリアとして知られていた。だが再開発とともに路面電車や最新住宅の整備などが進み、キャンパス移転後は研究機関なども併設され、「ファミリーフレンドリーでグリーンな病院」として誕生することになるという。

この日、Marc Benioff氏が米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校(UCSF)に1億ドルを寄付したことが発表され、UCSFが現在サンフランシスコのミッションベイエリアに建設を進めている病院の名称が「UCSF Benioff Children's Hospital at Mission Bay」となったという。この病棟を含む周辺キャンパスには研究機関も併設されており、総工費は15億ドル規模に上る。なお、この病院に対する要望やアイデアを募集するためのサイトがSalesforce.comのIdeaforceのシステムを使って構築されている