金融危機を発端とした一時期の不調から脱しつつあることが伝えられる世界のPC市場だが、今後5年で何が起きるのだろうか? 米Forrester Researchの最新予測によれば、今後もPC市場は成長を続け、特に新規カテゴリとして登場したタブレットは、2012年にネットブックの市場を完全に追い越すことになるという。また台湾Acer会長のJ.T. Wang氏は、2010年中にもHPを抜いてPC市場トップの座を獲得することを宣言している。この地殻変動の様子を紹介していこう。
このForresterの最新レポートは、同社アナリストのSarah Rotman氏が17日に「Steve Ballmer Is Right: The PC Market Is Getting Bigger」のタイトルで発表している。6月初旬に開催された米Wall Street Journal主催の「D8」カンファレンスで、米Apple CEOのSteve Jobs氏はiPadの製品としての位置付けを説明し、米国におけるトラック販売の話を例に、PC市場がやがては衰退していくことを予見した。一方で、PC市場を居城とする米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏はこの見方を否定、今後もPC市場は成長を続けていくことを強調した。対極的な意見ではあるが、Forresterの最新レポートはある意味で両者の意見がともに正しいことを示している。
まず注釈すると、Jobs氏はiPadのようなタブレットをPCカテゴリの製品には含めていないが、Forresterの分類ではタブレットはPCの一種となっている。これを加味したうえで今後5年のPC市場を予測すると、米国におけるPC市場は引き続き拡大し、52%の規模で大きく伸びることが予測されるという。一方でデスクトップPCのカテゴリは唯一縮小に向かい、ゲームや3Dなど、限られた市場で効果を発揮する形になるという。以上を踏まえた2015年までのPC市場予測のまとめは下記のようになる。
米国のコンシューマに対するPC販売台数は、2010年よりも2015年のほうが大きくなる
タブレットのような新カテゴリの製品が成長し、ノートPC販売も引き続き成長を続ける
タブレットはネットブック市場を侵食し、2012年には完全に追い越す。さらに2015年には米国の全PC販売における23%のシェアを占めるようになる
デスクトップPCは唯一販売台数が減少するカテゴリとなる。だが依然として使用中のPC製品としては最大勢力のまま
Rotman氏の意見は、タブレットのような新カテゴリの製品は驚くべき成長を見せるものの、依然として旧式とされるPC製品の需要は確固として存在するというものだ。Jobs氏は、昔は車販売の多くがトラックであり、現在は全体に占める割合は数%程度に過ぎないと将来のPC市場の位置付けを予測したが、Rotman氏は「PCは早々すぐにはトラックにはならない」とコメントしている。