「開発中断はネガティブな決断ではなかった」

理由は、そのモデルに投票されたアンケート用紙は自由回答欄に細かく熱いコメントがされているものが多かったからだという。

前川「デザイナーもそのモデルをプッシュしていました。"デジタルならではの先進的な雰囲気"が、もっとも感じられるモデルだったんです」

この後、2006年にデザインの方向性が決定、2007年にスペック面でのアナウンスを変更しつつも初めて実動機のデモンストレーションに至る。しかし、2008年には開発が中断され、ショーでの参考出品もなかった。情報が途絶えた市場には、645D開発中止かとの憶測も流れた。が、2009年、画素数は30メガピクセル以上というアナウンスとともに、645Dの続報が流れる。

2007年PIEの参考出品。31.6メガピクセル機

2009年のPIEで復活、2010年の発売を告知

前川「2008年は、『K-7』の開発に注力していました。ペンタックスは小さなメーカーですから、K-7と645Dを平行して開発するだけの余力がなかった。ただそれだけなんです。でも、このおかげで645Dの標準技術もまた大きく高めることができました。K-7への集中は、決してネガティブな決断ではなかったと思います」

事実、645Dには映像エンジン「PRIMEII」をはじめ、K-7にも搭載された技術が数多くフィードバックあるいは強化され、搭載されている。

新AFモジュールSAFOX IX+

前川「高速、低ノイズの新映像エンジンPRIMEIIは、実は最初から645Dのために開発されたものです。だから、K-7ではややオーバースペック気味なところもありました。一方、AFモジュールについては、K-7のSAFOX8に代わり、新型のSAFOX IX+(ナイン・プラス)を採用しています。電子水準器は水平に加えアオリ方向にも対応しました(K-7は水平方向のみ)」

それでありながら、操作のしやすさ・使いやすさは、K-7よりむしろ簡単になっているように感じられる。

前川「ユーザーインタフェースの良さは、弊社製品の大きなアドバンテージと自負していますし、本当に多くのお客様からお褒めいただく点です。今回も説明書が不要なほどだと考えています」

645Dのボディは、K-7同様にマグネシウム外装。液晶モニターは、K-7(限定のシルバーモデル)は背面のみ強化ガラスだったが、645Dでは背面・上面ともに強化ガラスを採用した。ピンポイントで50kgの衝撃まで耐えられるという。当然、防塵防滴仕様だ。

前川「防滴よりも防塵のほうが重要なんです。チリやホコリはカメラの内部まで入ってきますからね。フィールドに持ち出すカメラとして設計している645Dでは、防塵性能は譲れない部分なのです」

耐寒性能はK-7と同じく、-10℃での動作を保証

ダストリムーバルは進化した「DRII」を採用。ゴミの付着を確認するためのダストアラートも装備

バッテリーもK-7と同じものを使用していますから、サブ機としてK-7をお持ちでも、バッテリー・充電器とも共通で使用できます。撮影可能枚数は、一度の充電で500枚を目指していたのですが、開発陣の努力で約800枚の撮影が可能になりました」

この撮影枚数は、ライブビューを見送ったことの恩恵でもありそうだ。

前川「正直に言えば、ライブビューも付けたかったんです。ただ、どんなに調べてもわれわれの要求条件にかなうセンサーがなかった。とにかく"美しい静止画の撮影"を最重視したため、結果的にコダックのCCDを採用して、ライブビューを諦めたのです。そのぶん、ファインダーにはかなり力を入れました。この大きさで視野率98%と、今までになく良いファインダーになったと自負しています」

アルミダイキャストシャシーとマグネシウム外装で強度と精度を確保

背面液晶モニターに加え、軍艦部の上面モニターにも強化ガラスを採用

メモリースロットは、同社初のデュアルスロットを装備。SDXCについては現在検証中で、「速度は対応できないが、容量には対応できる見込み」(前川氏)とのこと。また、現状ではスロット間のコピーをサポートしていないが、要望が多ければ検討したいという。

トラピゾイドプリズムを採用し、頭頂部を小型化。ファインダーは98%の視野率を確保した

SD/SDHCデュアルスロットは同時書き込みや異形式書き込み、順次書き込みにも対応する

なお、SDおよびSDHCが選ばれた理由としては、カードメディアのメインストリームであることや、接点数が少なくエラーが出にくいこと、コンパクトゆえに本体内で場所をとらないことなどが挙げられている。…つづきを読む