今日のスマートフォンでフロントカメラは珍しくない。だがJobs氏に言わせれば、フロントカメラを装備していても、それを活かせる製品に仕上げなければ意味がない。Appleは18カ月間もフロントカメラを活用するためのソリューションに取り組み、そしてFaceTimeに至った。FaceTimeでは、通話中でも前後のカメラの切り替えが可能で、バックカメラでは通話している相手と同じものや景色を見ながら会話できる。ユーザーにビデオ通話をあえて利用してもらうためには、使いやすさと画質もポイントになる。そうしたユーザーにとって使える製品に仕立て上げるのがコンプリートソリューションである。
iPhone 4のカメラ機能では新たに720p(30fps)のHD動画の撮影が可能になったが、Appleは同時にiPhone上で手軽に動画を編集できるiPhone用アプリ「iMovie」を用意した。また「地球上で最も薄いスマートフォン」(Jobs氏)で、前モデルよりも長いバッテリ駆動時間を実現するA4チップとiOS 4、ステンレススチール枠を使ったデザインの組み合わせもコンプリートソリューションである。
iOS 4のマルチタスク機能では、ユーザーが実行中のタスクを一切管理する必要がない。ゲームの途中でメール確認など、快適に切り替えられる。これでAppleが主張するようにバッテリ駆動時間への影響が最小限ならば、「ようやくマルチタスクがサポートされた」のではなく、モバイルデバイスにおけるマルチタスクの新たな解である。
使用したアプリが順番にマルチタスク機能の切り替えリストに追加される。長押しすると写真のようにアイコンを削除できる状態になるが、これはタスク管理ではなく、単なるアイコンの整理だ。マルチタスクに関してユーザーは何も管理する必要はない |
ユーザーだけではなく、開発者に対してもAppleはコンプリートソリューションを用意している。iOSアプリにモバイル広告を配信するiAdでは、アプリ内でユーザーがiAd広告を利用するようにし、終了後はアプリに戻るようになっている。従来のアプリ内広告のように、Webブラウザやメディアプレイヤーにユーザーを奪われることはない。Appleは8週間前にiAd広告の販売を開始し、7月1日のサービス開始を前に、今年下半期分ですでに6,000万ドル以上の契約を獲得したという。iAdには広告主も存在する。加えてキーノートで披露されたiAd広告のデモは、機能的にユニークでデザインに凝ったものだった。広告によって、アプリのデザインが台無しになる心配は必要なさそうだ。
AppleのコンプリートソリューションへのこだわりはiPhone 4だけの特徴ではない。だが、iPhone 4は端末、そしてエコシステムやビジネスモデルを含めAppleの近年の努力が形になった節目の製品という印象だ。だから、初代iPhone以来の"大きな進化"なのだろう。