ゆったりとした部屋、でもコーナー窓にかぶりつき
こんなに素晴らしい窓を持つ部屋「コーナーダブル」は、34平方メートルの広い部屋。1人で過ごすにはもったいないくらい。デスクが壁際ではなく、部屋の中央にある。なんとリッチな配置だろうか。真四角なダブルベッドは、枕がなければ寝る向きに迷うほど。バスルームも広くてアメニティも充実。バスタブが足を伸ばせる大きさなのだが、窓の景色が気になって、シャワーで済ませた筆者であった……。
室内はとても静かだ。窓に近づくと、微かに踏切と列車の通過音が聞こえる程度。「トレインビュープラン」を設定した他のホテルでは「鉄道の音が嫌がられて人気が無く、あえて鉄道ファンに向けて売り出したら大ヒット」という逸話も聞く。しかし、小田急ホテルセンチュリーサザンタワーについては違う。決して他の部屋と見劣りするわけではないから、逆転の発想ではではなさそうだ。あとでホテルの方に伺うと「トレインビューは、新宿の他のホテルでは真似のできない、当ホテルの宝物」とのこと。すごく前向きにトレインビューを売り出しているようだ。
14時にチェックイン。景色に圧倒されつつ、とぎれることのない電車の発着を眺めていると、時間があっという間に過ぎてしまう。この時間帯の注目部分は新宿駅5~6番ホームだ。ここは湘南新宿ライン系統の特急列車が主に使用している。成田エクスプレスが30分~1時間ごとに発着する。車両はおなじみの赤い屋根「253系」と、最新型の「E259系」だ。山手線や総武線は、ほぼ同じ車両に統一されている。これに対して埼京線は湘南新宿ラインの列車が発着するため、車両の種類が多くて楽しい。中央線快速を眺めると、もうすぐ引退する省エネ電車「201系」が有終の美を見せてくれる。
こうして東側を眺めつつ、南側の小田急線も要チェック。14時40分には白いロマンスカー「50000形VSE」が箱根に向かっていく。小田急の電車もいろいろな種類があって、こちらの眺めも飽きない。各駅停車はステンレス車ばかりになったけれど、往年の白い車体に青帯の「5000形」も走っている。昭和生まれにとってはこれこそが小田急という色だ。
EXEの時間帯はペデストリアンデッキを散歩
14時台後半から2時間ほどは、小田急の特急は「30000形」EXEが中心。JR側も一通り眺めたし、"下界"のペデストリアンデッキを散歩してみた。JR線路を跨ぐ橋からの眺めが気になったし、実はランチもまだだったため食料も調達したかったからだ。
「せっかくなら鉄道にちなんだランチを」と、入場券を買って小田急新宿駅に入り、特急用ホームの売店で「ロマンスカー弁当」を購入。EXEの発車を見送って戻ってきた。ペデストリアンデッキもなかなか良い場所。JRを跨ぐ橋は風除け板が透明なので、電車がバッチリ見える。雑貨屋さんの裏手はママ鉄さんがいた。ここは低い鉄柵だけだから、小さな子どもも電車を間近に感じられるようだ。
1時間ほどで部屋に戻り、眺望を楽しみながら遅い昼食。JR側を見下ろすと、「かいじ」「あずさ」用の「E257系」が停まっていた。埼京線と中央線快速に挟まれた部分の線路。ここは中央線方面の折り返し列車が待機する引き上げ線だ。1885(明治18)年に新宿駅が誕生してから125年、新宿駅は拡大と改良を続け、日本一の乗降客数となった。列車本数も多く、線路がギッシリと詰まっている。そのなかで引き上げ線も組み込むとはすごい。
15時25分頃と16時25分頃には、中央線快速の東京方面からも「E257系」がやってくる。これは東京駅始発の甲府行き「かいじ」だ。そして17時20分頃の6番線ホームに注目。東武日光行きの「スペーシアきぬがわ7号」が待機中だ。新宿で東武鉄道の電車が見えるなんて不思議。「スペーシアきぬがわ7号」は湘南新宿ラインから東北本線に入り、栗橋駅から東武日光線に乗り入れる。このルートはJRも「485系」をスペーシア色で走らせている。
スペーシアの発車直前、小田急の線路には「20000形」RSEの「あさぎり」が到着する……はずだったけど、なかなか来ない。ちょっと遅れているのかな、と思ったけれどちっとも来ない。そのうちに小田急の線路は各駅停車の電車が数珠つなぎになった。夕方のラッシュにしては混みすぎ。微かに聞こえる踏切の音も鳴りっぱなし。携帯電話で運行情報サイトをチェックしたところ、16時30分頃に神奈川県内の区間で事故が発生し、ダイヤが大幅に乱れていた。ロマンスカーは運休のようだ。寂しいけれど、これはこれで珍しい眺めである。