東芝は5月11日、都内で記者会見を開催し、同社の2010年度の経営方針についての説明を行った。
登壇した代表執行取締役社長の佐々木則夫氏は、現在の経済環境の見方として「リーマンショック以降がどういった世界になるのかと考えた場合、それ以前のような高成長の時代には戻らず、比較的緩やかな成長の時代となる。そうした状況の中で、どうやって利益を確保していくのか、ということを考えると、どこを狙うかは明白だ」と語る。
また、「色々な地域で色々なトレンドが出てくるが、新興国は中国を中心に10%までは行かないまでも高成長を継続させ、消費市場としての地位を向上させていく」(同)と指摘、そうした国々が先進国で使われている技術を加速度的に活用するようになることもあり、「東芝としてはエネルギー・環境などのバイタルとヘルスケア/ICT領域に事業機会を見出す」(同)とする。
こうした新たな事業の展開に向けた構造転換を推し進めることで、「成長事業への集中、事業領域の拡大、新規領域への展開の3つに注力。これにより、2012年度には売上高8兆円、営業利益4,500億円を狙う」(同)とし、そのための固定費削減なども推し進めていくことを強調した。
こうした目標に向かうために2010年度は、「成長事業への集中」「事業領域の拡大」「新規領域への展開」そして「環境経営」の4つの課題が掲げられた。成長事業への集中については、NAND型フラッシュメモリと原子力が主となる。NANDは2Xnmプロセスの64Gビットチップを2010年夏に量産開始することを明言。「32nmプロセスで微細プロセスに対する技術を先に確保しており、2Xnmプロセスでは急速に立ち上げることが可能となる」(同)と意気込みを見せるほか、2001年7月より建設を開始、2011年春の竣工を予定している四日市工場の第5棟について、「2Xnm以降の対応はもちろん、次世代のメモリとしてPOST NANDの量産展開なども視野に入れた工場となる」(同)とその役割を説明する。
一方の原子力については、2015年までに東芝およびWestinghouse Electric(WEC)のシナジー効果により39基の受注を計画。すでに受注を受けている14基については着実に進展していることに加え、沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)の2つの炉型の提供などによる優位性でさらなる受注の促進、アライアンス強化による生産能力拡大などを図っていく計画とする。
また、事業領域の拡大としても原子力の米国でのBWR市場への参入や日本でのPWR市場への参入のほか、ウラン製品の販売会社の設立、燃料事業の取得、濃縮ウラン製品事業化に向けたMOUの締結、ウランに加えレアメタル分野での協業に向けたMOUなどのサプライチェーンの強化・拡充が図られている。
もう1つの事業領域の拡大としては「ヘルスケア」が挙げられる。これまで同社は診断装置を中心に医療現場への提供を行ってきたが、「これからは実際の手術の手助けなどを行うことで、診ると治すのハイブリッド手術の提供に向けた取り組みを進める。加えて、普及型のCTスキャンやX線装置、超音波診断装置など新興国への対応に向けたラインナップの強化や中国での開発・製造したものをアジアや中南米の販売する」ことで、臨床価値の向上を図っていくという。