そういう状況の後で、Intelとしては、なんとしてでも開発者を集めたいと、考えている。すでにNetBook用のWindowsアプリケーションと共用するアプリケーションストアAppUpも開発し、ベータテストをすすめている。
Renee James氏は、基調講演でIntelのCPUが実現する世界のデモを行って見せた。サーバから、スマートフォン、組み込みまでをカバーするインテルアーキテクチャが実現する世界である。クラウドは、Xeonのサーバで実現され、人々はPCを使う。街中にあるような様々な機器にもインテルプロセッサが組み込まれおり、スマートフォンもまたインテルのCPUだ。そこで、見せたのは、同じアーキテクチャを使うことによるソフトウェア環境の充実ということだ。開発者は、1つのアーキテクチャだけを使って、データセンターから自動販売機、デジタルサイネージ、スマートフォンといったプラットフォームでソフトウェアを開発できる。広く使われているPCがそのまま開発環境になる。
MeeGoは、家電や組み込み系システム、そしてハンドヘルドやNetbookまでをカバーする単一の実行環境となる |
MeeGoに賛同するオペレーティングシステムベンダー(OSV)、ソフトウェアベンダー(ISV)、そしてハードウェアメーカー(OEM)など |
この前に行われたPerl Mutter氏の「Compute Continuum」の世界を具体的に描いて見せたわけだ。そして、Renee James氏によれば、このために開発者は開発期間を短縮でき、コストも下がる。それを、よりよい製品を作るための時間や投資に利用できるという。
また、開発者が、ビジネスを行う場所としてのアプリケーションストアとしてAppUpを用意し、ここを使って、開発したソフトウェアのビジネスが行えるようになるとした。今回は、中国向けの発表として、このAppUpを使えば、中国の開発者も北アメリカやヨーロッパに対してビジネスが可能になることを発表した。
MeeGoは、Moorestownのスマートフォンにも搭載されるが、Netbookクラスにも搭載されることになる。Windowsのライセンスが不要となるため、製品コストを下げることが可能だ。こちらには、すでにAcerやASUSなどが対応を予定しているという。
また、Core i5/7などの上位プロセッサでは、Intelの提供するParallel Studioを使うことで、より性能が向上するというデモも行った。Parallel Studioは、ソフトウェアの並列性を探し、アプリケーションをマルチスレッド化するためのツールだ。マルチスレッド化は、マルチコアで有利だが、IO待ちなどが入るのであれば、シングルコアなどでも、処理速度が改善される可能性がある。このため、同じプログラムでも、マルチスレッド化したほうが、実行プラットフォームに関係なく速度が向上する可能性があり、特に複数コアを搭載するシステムでは、さらに性能が上がりやすい。
Intelとしては、これまでPCで培ったノウハウや技術などがそのまま、組み込みやサーバ、そしてスマートフォンまで有効と言いたいわけだ。それは、事実ではあるものの、開発者は、結局「売れているプラットフォーム」へと流れていく傾向がある。もちろん、開発しやすい、ビジネスしやすいといった条件は必須である。Androidが急速に開発者を集めているのは、iPhoneに見られる、開発者への制限、条件が少ないという面も大きな理由である。
開発者とプラットフォームについては、「ニワトリとタマゴ」的な見方をする人もいるようだが、実際には、プラットフォームがなくて集まる開発者はおらず、実際には「プラットフォームありき」なのである。その意味では、早急なMoorestownの立ち上げが必要となるところなのだが。