Atomは、組み込みからPCまでをカバー

最後に、現在のAtom系のラインアップを紹介し、Moorstownのデモを行った。Moorestownは、Lincroftプロセッサと、Langwellチップセットによるシステム(プラットフォーム)を指し、現在、LGやNOKIAなどが、スマートフォンを開発中である。今年年末には、Moorstownを搭載した製品が登場すると言われている。ただ、Moorestownは、オペレーティングシステムとしてLinuxをベースにしたMeeGoを前提としており、Windowsには対応しない。ただ、現行のZシリーズの後継となる、Lincroft系でWindowsをサポートするプロセッサが用意されるようだ。

組み込みやMeeGoに関する話は、基調講演で、別のスピーカーが話す予定であり、Perlmutter氏は、簡単に現行のラインアップと、Moorestown、Medfieldのロードマップを紹介するのみに止めた。

Atom系のプロセッサは、一時は、ネットブック用として大量に出荷されたが、最近では、CULV系の出荷が増え、ネットブック人気にも多少かげりが見えるという。前述のようにIntelは、組み込み系への進出を狙っており、その1つはスマートフォン用にLincroftを、そしてスマートTV用のCEシリーズなどを製品化してきた。スマートフォンも、純粋なPC用途ではなく、広い意味では、組み込み用であり、AtomのNシリーズ、Dシリーズ以外は、すべて組み込み用途を狙うものだ。

最後に、Perlmutter氏は、こうしたモバイルマシンに必要な無線通信機能としてWiMAXを紹介した。中国では、WiMAXは採用しておらず、現時点では、3Gの携帯電話ネットワークが構築されているところだ。北京市内では、3Gのネットワークが利用可能だが、世界的に普及しているW-CDMAと米国が中心となるCDMA2000のほかに、中国独自のTD-SCDMA方式も利用されている。WiMAXは、規格としては4G(IMT-Advanced)にふくまれるが、携帯電話系の事業者は、LTEの採用が多数派だ。中国では、政府が承認しない限り、勝手に無線ネットワークを構築することができないため、現時点では、WiMAXの採用は見えていない。中国でも、LTEが検討されており、おそらくLTEが導入されるだろう。その時点で、WiMAXが導入されるかどうかは、世界的な動向と、Intelの働きかけ次第だろう。

今回の基調講演を見るに、Intelとしては、Atom系で組み込み用からネットブック、ネットトップのような下位PCまでをカバーし、いわゆる一般消費者向けPCからサーバをCore/Xeon系のプロセッサでカバーという役割分担を明確にしたようだ。組み込み分野では、長い製品寿命が必要とされ、場合によっては20年以上も同一の製品を維持する必要がある。上位のプロセッサでは、製造ラインの問題もあり、こうした対応は難しい。このため、Atom系は、最新のプロセスにはすぐに対応せず、また、マイクロアーキテクチャをプロセス世代で2世代間維持することで、長い製品寿命を可能にしている。

これまでのIntelでは、古い世代のプロセスにしか対応していない工場(Fab)は、チップセットを作るしかなく、できるだけ早期に新プロセスへの対応が必要だった。しかし、Atomプロセッサの登場により、Fabは、最新プロセスの間は、メインストリームのプロセッサを作り、プロセス世代が切り替わったら、Fabの設備を変えるまでは、チップセットだけでなく、Atom系のプロセッサの製造を行わせることができる。プロセッサ自体のダイサイズも小さく低コストだが、製造コストも下げることが可能だ。Intelとしても、Atomプロセッサを広く普及させ大量に製造することが工場運営という点からも必要なのである。