一方で、このように収集したデータを外部に出すことも制限されている。例えば、あるアプリがユーザーからの投稿情報を他のSNSに出力する機能を持っていたとして、その場合はSNSへのデータ出力の前にユーザーに対して外部サイトへの投稿が行われる旨を明示する必要がある。
これだけならごく当たり前の話のように思えるが、もし前述の広告マーケティングの例に当てはめた場合、広告マーケティング企業がユーザー活動データ収集を目的として「広告表示兼データ収集用」のモジュールをアプリ開発者に配布する行為は規約に反する可能性があることだ。こうしたモジュールによるデータ収集は、組み込まれているアプリ本来の目的からは逸脱しているからだ。
Google傘下のAdMob、Adobe傘下Omnitureに打撃か
これは、アプリ内に広告ネットワークを構築してマーケティング活動を行っている一部企業には大打撃となる。例えばモバイル広告分野で最大手のAdMob(現在はGoogle傘下)、Webデータ解析を主業務としたOmniture(現在はAdobe傘下)といった企業は今回の措置で締め出される可能性がある。
モバイル市場調査を行っている米FlurryのPeter Farago氏は「今回の規約をよく読み込んでいる最中でまだ結論を出すのは早い」としながらも、Appleに真意を問いつつ、マーケティング手法を変更しなければならない可能性があると警戒心をのぞかせている。
「iAd」
今回の規約変更だが、おそらくはAppleが発表したモバイル広告の新サービス「iAd」を意識したものだと思われる。広告ネットワーク構築とそれを通じたデータ収集がAdMobら広告企業の主業務だが、プラットフォームそのものを持たない彼らは、各社スマートフォンごとに広告ネットワークを構築することになる。
だが、AppleがiAdでこの市場に参入する以上、他社の広告ネットワークにプラットフォームを明け渡す気はないのだろう。SDKの規約でこれら広告ネットワークを締め出したうえ、それ以外のアプリ開発者らにはiAdのみを使うよう促していくつもりなのかもしれない。