2007年発売開始以来の累計販売台数が200万~300万台で、市場シェア6割超といわれるKindleが、iPadの登場でどれだけ変化するのだろうか。

Goldman Sachsが12日に出したレポートによれば、電子書籍市場は2010年から2015年にかけて4倍に成長し、31億9,000万ドルの市場規模に達する見込みだという。2015年時点のシェアはAppleが33%で、2010年に50%だったKindleのシェアは28%まで下落するとしている。Appleによれば、8日時点でiPadで電子書籍を閲覧するためのアプリ「iBooks」は60万本以上がダウンロードされ、一番の人気アプリとなっている。これが今後、iPadの販売台数が伸びるごとに上乗せされていくことになる。

またKindleのライバルはiPadだけではない。市場シェア2位のソニーの「Sony Reader」があるほか、米Barnes & Nobleの「nook」は12日にオンラインとB&N店舗以外に、家電量販店大手のBest Buy全米店舗において同端末の販売を開始した。少なくとも、同市場でKindle一人勝ちという状態は間もなく崩されることになる。

タッチスクリーン搭載のSony Reader「PRS-600」

米Barnes & Nobleの「nook」

こうした動きをライバルはどう見るのか。BusinessWeekの記事によれば、ソニーのデジタルリーティング部門プレジデントのSteve Haber氏は、「デジタルリーディング機能を含んだタブレットデバイスの登場は、電子書籍ビジネスにとって良いことだ」と市場の広がりを期待するコメントを寄せている。

米Amazon.com広報Andrew Herdener氏は今後の製品計画についてはコメントを差し控えたものの、iPadの半分以下の重量というKindleの携帯性と、無料で携帯電話ネットワークを介し本がダウンロードできる仕組みは、iPadに対するアドバンテージと強調する。iPadでは現在のところ、米国でAT&Tの通信網を介したデータ通信サービスの料金が月額15~30ドルになるとしている。

Kindle側の新しい動きとしては、今年1月のiPad発表直前にサードパーティに対してKindleアプリ開発環境の開放を発表している。もっとも2年以上同種のサービスを続けて業界最大手となっているAppleに、さらに表現力や性能の面で劣るKindleアプリがどこまで対抗できるかは未知数だが、こうしたサードパーティの取り込みが市場を攻略する鍵を握っているのは間違いない。

また、Amazon.com自身が他のプラットフォーム用Kindleアプリをリリースし、自社の書籍販売ネットワークの利用をさらに加速させる試みを続けている。PCやMac版のほか、BlackBerry、iPhone、そしてiPadと、48万冊以上のデジタルブックコンテンツを抱える同社にとっての強みだ。現在6万冊程度といわれるiBookstoreと比較しても圧倒的だ。

いずれにせよ、iPadの登場が良い意味でも悪い意味でも電子書籍市場への刺激となっていることは確かだ。一連の動きが世間の注目を浴び、さらに市場が拡大する好サイクルを作り出すきっかけとなっている。